ターゲティングの決め方とフレームワーク6選!失敗しない設定手順とは【具体例】

「ターゲティング」という言葉、よく聞くけれど実はよく分かっていない…。
フレームワークも種類が多くて、結局どれをどう使えばいいの?
マーケティングの業務に初めて携わる方や、改めて基礎を復習したい方の中には、このような疑問や不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。
ターゲティングは、限られた予算や時間で最大限の成果を出すための「マーケティングの要かなめ」です。そして、適切なフレームワークを活用することで、誰でも効果的な戦略を効率よく立てられるようになります。
この記事では、ターゲティングの基礎知識から、絶対に押さえておきたい「6つの鉄板フレームワーク」、そして失敗しないための実践手順までを分かりやすく解説します。
まずは全体像を把握するために、本記事で紹介するフレームワークの比較早見表をご覧ください。あなたの今の目的に合った最適な手法はどれか、チェックしてみましょう。
| フレームワーク | 特徴・分析対象 | こんな時に有効(活用目的) |
|---|---|---|
| 6R | 市場規模、競合、成長性など 6つの指標で総合評価 |
参入すべき「勝てる市場」を見極めたい時 |
| ペルソナ分析 | 架空の顧客プロフィールを 詳細に設定する |
ユーザーの感情や行動背景を深く理解したい時 |
| エリアターゲティング | 店舗からの距離や時間で 物理的な範囲を絞る |
【店舗向】来店促進、物理的な商圏を定めたい時 |
| 地域特性分析 | エリアごとの居住者属性 (富裕層、単身層など)を評価 |
【店舗向】チラシやポスティングの配布効率を高めたい時 |
| VALS | 価値観やライフスタイルで 消費者の内面を分類する |
心に響く広告メッセージやクリエイティブを開発したい時 |
| RFM分析 | 購買履歴(いつ・頻度・金額)で 既存顧客をランク付けする |
既存顧客の維持・優良化施策(リピート促進)を行いたい時 |
目次
「ターゲティング」はマーケティングの基本

「ターゲティング」とは、ある前提において共通性を持つ集団(セグメント)ごとに市場を細分化して 、勝負する市場を絞ることです。
ターゲティングというと市場を分析してターゲットを決めることとして捉えられがちですが、最大の目的は企業の利益を伸ばすことです。そのために商品を販売していくセグメントを選定していきます。
ターゲティングはビジネスを始める際に欠かせないポイントであり、ターゲティングをしっかりおこなえるかどうかは、ビジネスを成功させる要因の 一つといっても過言ではありません。ターゲティングを怠ると、商品やサービスに興味のない顧客にまで無駄なアプローチをおこなうこととなり、最大限の利益を得られなくなるでしょう。
ターゲティングはSTP分析の一工程
ターゲティングは、マーケティング戦略を進めるためにおこなうSTP分析の2段階目にあたります。
「STP分析」は、
- セグメンテーション(Segmentation)
- ターゲティング(Targeting)
- ポジショニング(Positioning)
の頭文字をとった言葉で、それぞれ以下のような作業をおこないます。
- セグメンテーション:市場をセグメントに分類する
- ターゲティング:ターゲットとするセグメントを決める
- ポジショニング:ターゲットにとって魅力的な存在になる
ターゲティングの工程ではセグメンテーションで分類した中からターゲットとして集中的にアプローチしていく市場や消費者のセグメントを決め、次のポジショニングにつなげていきます。
ターゲティングで使えるフレームワーク6選

ターゲティングには、市場のマクロな視点から個人の心理、さらには物理的な商圏まで、目的に応じて使い分けるべき複数のフレームワークが存在します。
ここでは、精度を高めるために知っておきたい6つの代表的な手法を紹介します。自社の課題が「市場選び」なのか「顧客理解」なのか、あるいは「エリア選定」なのかに合わせて、適切なフレームワークを選択してください。
6R|市場の有効性を測る

ターゲティングを行う上で、基本となるのが「6R」と呼ばれるフレームワークです。
以下の6つの指標を用いて市場を多角的に分析し、「その市場がビジネスとして魅力的か(勝てる市場か)」を総合的に判断します。
- Realistic Scale(有効な規模)
- Rate of Growth(成長率・成長性)
- Ripple Effect(波及効果)
- Reach(到達可能性)
- Rival(競合)
- Response(測定可能性)
それぞれの要素について、具体的なチェックポイントを見ていきましょう。
1.Realistic Scale(市場規模の有効性)
「市場規模の有効性」とは、その市場でビジネスが成り立つ十分な売上や利益が見込めるかを表す指標です。しかし、単に「人が多い」だけでは不十分です。市場が大きすぎれば大手競合がひしめき合い、逆に小さすぎれば売上の上限が低くなってしまいます。
自社のビジネスモデルにおいて、採算が取れる十分な顧客数が存在するかを確認しましょう。
2.Rate of Growth(市場の成長性)
「市場の成長性」は、ビジネスを長期的に継続できるかを判断する指標です。
現時点での市場規模が十分でも、数年後に衰退する産業であってはリスクが高くなります。逆に、現在はニッチな市場でも、トレンドや法改正によって今後急拡大する可能性もあります。
「現在」だけでなく「未来」の市場動向を見据え、成長段階にある市場を選ぶことが成功のポイントです。
3.Ripple Effect(波及効果)
「波及効果」とは、そのターゲット層にアプローチすることで、周囲への口コミや拡散が期待できるかという視点です。
例えば、情報感度の高いインフルエンサー層や、横のつながりが強いコミュニティをターゲットにすれば、一度の販売から二次的・三次的な売上が期待できます。
広告費を抑えて効率よく集客するためにも、「拡散力・影響力のある顧客層か」を意識することが大切です。
4.Reach(到達可能性)
「到達可能性」は、その顧客に物理的・心理的に商品やサービスを届けられるかを指します。
どんなに魅力的なターゲットでも、地理的に遠すぎて来店できなかったり、自社のプロモーション手段(Web広告やチラシなど)が届かない層であれば意味がありません。
特に店舗ビジネスやエリアマーケティングにおいては、「商圏内にそのターゲットが実際に住んでいるか」という地理的な視点が極めて重要になります。
5.Rival(競合)
「競合」の状況把握も欠かせません。
すでに強力なライバルがシェアを独占している市場(レッドオーシャン)では、新規参入のコストが跳ね上がります。
競合が手薄な市場、あるいは自社の強みで差別化できる市場(ブルーオーシャン)を見極める必要があります。あえて競合がいない未開拓のエリアやジャンルを狙うのも一つの戦略です。
6.Response(測定可能性)
「測定可能性」とは、実施したマーケティング施策の効果を測定できるか、という指標です。広告への反応率や購入率などを数値で追跡できなければ、PDCAサイクル(改善)を回すことができません。
施策に対する顧客の反応をデータとして取得できる環境・手段があるかを確認しましょう。Web広告はもちろん、チラシ配布などのオフライン施策でも効果測定ができる仕組み作りが重要です。
6Rについての詳しい解説は、以下の記事をご覧ください
ペルソナ分析|顧客像を深掘りする
ペルソナ分析とは、実在するデータやインタビュー結果に基づき、自社の典型的な顧客像(=ペルソナ)を架空の人物プロフィールとして詳細に設定する手法です。
一般的なターゲティング(セグメンテーション)が「30代・女性・会社員」といった属性(デモグラフィック)で集団を分類するのに対し、ペルソナ分析では以下のような心理的・行動的特徴(サイコグラフィック)まで解像度を高めて設定します。
- 基本属性:氏名、年齢、居住地、家族構成、年収
- ライフスタイル:平日の過ごし方、週末の趣味、よく見るSNS、通勤手段
- 価値観・課題:今抱えている悩み、商品を選ぶ基準、叶えたいゴール
たとえば「30代女性」という広範な括りではなく、「都内在住、共働きで子育て中、週末は時短のためにまとめ買いをする、健康志向の30代女性」のように人物像を特定します。
これにより、関係者間で「誰に向けた施策なのか」という認識を統一し、具体的なユーザーの行動文脈に沿った施策を立案するために用いられます。
エリアターゲティング|商圏・立地で絞り込む

エリアターゲティングとは、顧客の「居住地」や「行動範囲」といった地理的要因(ジオグラフィック変数)に基づいて販促をおこなう範囲やターゲットを絞り込む手法です。
特に小売・飲食・サービス業などの実店舗を持つビジネスや、訪問・配送サービスにおいて、マーケティングの基盤となる概念です。
どれほど商品にマッチするペルソナ(顧客像)であっても、物理的に来店が不可能な距離に住んでいる場合、顧客にはなり得ません。そのため、以下の「商圏」を定義し、対象エリア内の生活者をターゲティングします。
- 距離圏:店舗から半径◯km以内のエリア
- 時間圏:車や徒歩で◯分以内に到達できるエリア
- 行政区画:特定の市区町村や町丁目
この手法では、設定したエリア内に「ターゲット層が実際にどれくらい居住しているか」を国勢調査データや地図情報システム(GIS)を用いて定量的に把握します。
WEB上の行動履歴ではなく、物理的な生活拠点をベースにすることで、無駄な広告配信を防ぎ、商圏内の潜在顧客へ確実にアプローチするために使用されます。
地域特性分析・エリア分析|エリアの質を評価する
地域特性分析・エリア分析とは、国勢調査などの公的統計データを用いて、その地域に「どのような属性の人々が住んでいるか」を小地域(町丁・字)単位で分類・評価する手法です。
マーケティング用語では「ジオデモグラフィック分析」とも呼ばれ、「似たような属性の人々は、似たような地域に集まって住む」という傾向に基づいています。
商圏として設定したエリアの中身を、以下のように居住者のタイプに分類して可視化します。
- 高層マンションが多く、世帯年収が高い地域
- 持ち家率が高く、居住年数が長い高齢層が多い地域
- ワンルーム賃貸が多く、学生や独身社会人が多い地域 など
単に「店舗から近い」という距離の基準だけでなく、「自社のターゲット層(例:富裕層)が多く住んでいる区画はどこか」をピンポイントで特定するために使用されます。
これにより、折込チラシの配布エリアを選定する際や、ポスティングの配布効率を高める(無駄な配布を減らす)ための判断材料となります。
VALS|消費者の心理を洞察する
VALS(Values and Lifestyles)は、消費者の「価値観」や「ライフスタイル」に基づいてセグメンテーションを行う、ライフスタイル分析のフレームワークです。
米国SRIインターナショナルによって開発されたもので、年齢や性別といった外形的な属性ではなく、個人の内面的な「動機(Motivation)」と保有する「資源(Resources)」という2つの軸で消費者を分類します。
このモデルでは、消費者を以下のような8つのタイプに分類し、それぞれの消費行動の傾向を定義しています。
- 革新者(Innovators):豊富な資源を持ち、自尊心が高く、新しい技術やアイデアを積極的に受容する層
- 達成者(Achievers):目標志向が強く、社会的地位やブランドを重視し、リスクを避ける保守的な層
- 経験者(Experiencers):若く精力的で、新しい経験や刺激を求め、ファッションや娯楽に支出する層
- 思考者(Thinkers):成熟しており、秩序や知識を重んじ、機能性や耐久性を基準に判断する層
消費者が商品を購入する際、その背後にある「なぜ(Why)」という心理的要因を特定するために使用されます。
単に「誰に売るか」だけでなく、「どのようなメッセージ(広告の訴求内容)であれば心が動くか」というクリエイティブ戦略や、コミュニケーションプランを策定する際の判断材料となります。
RFM分析|顧客を分類する
RFM分析は、すでに取引のある「既存顧客」を過去の購買履歴データに基づいてグルーピングするフレームワークです。
すべての顧客に一律の対応をするのではなく、顧客の貢献度に合わせて優先順位をつけるために用いられます。
以下の3つの指標(RFM)で顧客をスコアリングし、ランク付けを行います。
- Recency(最新購買日):直近でいつ購入したか(最近であるほど優良)
- Frequency(購買頻度):どのくらいの頻度で購入しているか(多いほど優良)
- Monetary(購買金額):累計でいくら使ったか(高いほど優良)
この3つの指標を組み合わせることで、「最優良顧客」「離反しそうな顧客」「新規顧客」といったセグメントを作成します。
例えば、「最近購入がない(Rが低い)が、過去の累計金額は高い(Mが高い)」顧客に対して、呼び戻しのためのダイレクトメールを送付するなど、具体的なアクション(誰に何をするか)を決定する判断材料として使用されます。
ここまでRFM分析について解説してきましたが、『自社のデータで実際に試してみたい』と思われた方も多いのではないでしょうか。 そこで、お手持ちの購買データを貼り付けるだけで、誰でも簡単にRFM分析ができるExcelテンプレートをご用意しました。ぜひダウンロードして、自社の顧客分析にお役立てください。
【実践】失敗しないターゲティング設定の4ステップ

フレームワークは個別に使うものではなく、正しい手順で組み合わせることで機能します。
一般的に用いられるSTP分析のプロセスに、実店舗ビジネスで必須となる「エリア検証」を加えた4つのステップについて解説します。
Step1. セグメンテーション(市場の細分化)
最初のステップは「市場の細分化」です。不特定多数の顧客がいる全体市場を、特定の切り口でグループ分けする作業です。
この段階ではまだターゲットを絞り込まず、あくまで「どのような顧客層が存在するか」を可視化します。一般的に以下の4つの変数が用いられます。
- 地理的変数(ジオグラフィック):国、地域、気候、人口密度など
- 人口動態変数(デモグラフィック):年齢、性別、職業、家族構成など
- 心理的変数(サイコグラフィック):価値観、ライフスタイル、性格など
- 行動変数(ビヘイビアル):購買頻度、使用用途、買い替えのタイミングなど
Step2. ターゲティング(標的市場の選定)
細分化したグループの中から、自社がアプローチすべき市場を決定します。
ここで前述の6Rのフレームワークを使用します。
「市場規模は十分か(Realistic Scale)」「競合は強すぎないか(Rival)」「成長は見込めるか(Rate of Growth)」などの指標と照らし合わせ、自社のリソースで勝てる見込みが高いセグメントを一つ、あるいは複数選択します。
Step3. ポジショニング(立ち位置の明確化)
選定したターゲット市場において、競合他社と差別化するための立ち位置(ポジション)を決定します。
一般的には「価格×品質」や「機能×デザイン」など、2つの軸でマトリクス図(ポジショニングマップ)を作成し、競合が不在、かつ顧客のニーズがある空白地帯(空きポジション)を探します。
この工程により、「誰に(Targeting)、どのような価値を(Positioning)提供するか」という戦略の骨子が固まります。
Step4. エリア特性の確認(商圏データの検証)
Webサービス以外のビジネス(店舗・不動産・訪問サービス等)では、最後に「場所」の検証が必要です。
机上の空論で終わらせないために、Step2で決めたターゲット層が、実際の出店予定エリア(商圏)に物理的に存在しているかを確認します。
- ターゲット含有率の確認:商圏内にターゲット(例:30代ファミリー)が何世帯住んでいるかを統計データで算出する。
- 競合分布の確認:地図上で競合店の位置をプロットし、Step3で決めたポジションが物理的にも空いているかを確認する。
戦略上のターゲットと、現実の商圏データに乖離がある場合は、出店エリアを見直すか、ターゲット設定自体をStep2に戻って修正します。
ターゲティングは「場所(エリア)」の視点が重要

デジタルマーケティングが主流となった現代において、多くのマーケターは「興味・関心(Interest)」でのターゲティングに注力しがちです。
しかし、小売・飲食・サービス・不動産といった「実店舗ビジネス」において、最も強力な決定要因は「場所(居住地・勤務地)」です。
Webとリアルのターゲティングの違い
Web上の行動履歴に基づくターゲティングと、実空間におけるエリアターゲティングには、決定的な違いがあります。
| 比較項目 | Webマーケティング | エリアマーケティング(リアル) |
|---|---|---|
| 基点 | 興味・関心:何を好むか) | 居住地・行動範囲:どこにいるか |
| 商圏の壁 | なし:世界中が対象 | あり:物理的な移動距離に依存 |
| データ源 | Cookie、閲覧履歴など | 国勢調査、位置情報など |
「ペルソナ」×「商圏データ」で精度を高める

どんなに精緻なペルソナを設定しても、その人物が商圏内に住んでいなければ、来店にはつながりません。
実店舗ビジネスのターゲティングにおいては、以下の2つの視点を掛け合わせることが必須条件となります。
- Who(誰に):ペルソナ、6R、VALSなどで設定したターゲット像
- Where(どこに):地域特性分析、商圏データ、GIS(地図情報システム)
「30代の健康志向の女性(Who)」をターゲットにする場合、Web広告を出すだけでなく、「その層が実際に多く住んでいる町丁(Where)」を地図上で特定し、そこへ集中的にチラシ配布やポスティングを行う。
このように「場所」の視点を組み込むことで、マーケティング施策の無駄を省き、到達率(Reach)を物理的に担保することが可能になります。
しかし、膨大な統計データと地図情報を自力で掛け合わせるのは容易ではありません。
マップマーケティングの商圏分析ツール「TerraMapシリーズ」であれば、今回解説したような高度なエリアターゲティングを、誰でもクリック操作だけで簡単に行うことができます。
まとめ:ターゲティングをマスターしてマーケティングを成功へ

- 目的に合致したフレームワークを選定し、多角的な視点で市場を分析する
- STP分析などの戦略立案に加え、地図データを用いた「エリア検証」を必ず行う
- 実店舗ビジネスでは「居住地」に基づくターゲティングが施策の精度を決定する
ターゲティングは、限られた経営資源を効率よく投下するために不可欠なプロセスです。
本記事では、状況に応じて使い分けるべき6つのフレームワークと、実践のための4ステップを解説しました。
- 市場の有効性を測る「6R」
- 顧客像を具体化する「ペルソナ分析」
- 商圏とターゲット居住地を照合する「エリアターゲティング」
- 地域の質を分析する「地域特性分析」
- 顧客の内面を分類する「VALS」
- 顧客をランク付けする「RFM分析」
重要なのは、机上の分析(STP)だけで終わらせず、最終的に「そのターゲットが商圏内に実在するか」をデータで検証することです。
自社のビジネスモデルに合ったフレームワークを選定し、地図データに基づいた根拠あるターゲティングを実施してください。





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