新規出店におけるマーケティングの基礎ステップ!4つの分析手法も解説

新規出店を検討する際、「新規出店の場所選びに迷っている」「効果的な集客方法がわからない」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。店舗をオープンするときには、ターゲットを明確にしてエリアの市場調査をおこなったうえで、特性に合ったマーケティング戦略を組み立てる必要があります。
今回は、新規出店におけるマーケティングのステップや、効果的な4つの分析手法を解説します。出店エリアに合った戦略を立てたい方、無駄なコストを抑えながら集客したい方は、ぜひ参考にしてください。
目次
新規出店におけるマーケティングの基礎ステップ
新規出店の際におこなうマーケティングのステップは、次のとおりです。
- 店舗の経営方針・コンセプトを決める
- 商圏分析でエリアの特性を把握する
- 出店候補地を決める
- 売上目標を決める
それぞれの手順を理解し、計画的に出店準備を進めましょう。
新規出店のマーケティングステップ1:店舗の経営方針・コンセプトを決める
新規出店におけるマーケティングでは、まず店舗の経営方針とコンセプトを明確にすることが大切です。
《新規出店時に決めておくべき項目》
- 何の商品・サービスを扱うのか
- どのようなスタイルで販売するのか
- ターゲットとする客層は誰か など
マーケティングの基本となる枠組みを固めることで、その後の戦略にも一貫性が生まれます。方針が定まったら従業員と共有し、店舗全体で同じビジョンに向かって進む体制を整えましょう。
新規出店のマーケティングステップ2:商圏分析でエリアの特性を把握する
新規出店を検討する際は、候補エリアの特性を多角的に把握できる「商圏分析」が必要です。人口構成や競合の状況、地域のニーズなどを調査し、その土地に出店する価値があるかを見極めましょう。
《商圏分析で見るべきポイント》
- 市場:人口、年齢構成、競合、ライフスタイル、トレンドなど
- 顧客:性別、年齢、属性、来店頻度、来店時間帯など
- 自社:自店舗の強み・弱み、競合との差別化要素、人材リソースなど
これらの視点で商圏を分析すると、地域の魅力やリスクを客観的に捉えられるため、最適な立地戦略を立てやすくなります。
現地調査も忘れずにおこなうのがポイント
出店エリアをいくつかリストアップしたら、実際に現地を訪れて調査しましょう。データだけでは見えない、リアルな人の流れや雰囲気を把握することで、新規出店におけるマーケティングの精度を高められます。
特に、曜日・時間帯ごとの人通り、周辺にある競合の立地や客層などを観察すると、出店後の集客を具体的にイメージしやすいです。データを使った机上の分析に、現地調査も組み合わせてみましょう。
新規出店のマーケティングステップ3:出店候補地を決める
商圏分析の結果をもとに、集客が見込めるエリアを選定して出店候補地を決めます。
人の流れや需要の有無だけでなく、交通アクセスの良さ・周辺施設との相性など、多面的に検討することがポイントです。もし候補地の選定に迷いが生じた場合は、経営方針・コンセプト設計から見直すことで、新たな視点を得られるでしょう。
新規出店のマーケティングステップ4:売上目標を決める
出店候補地が決まったら、次は具体的な売上目標を設定しましょう。
《売上目標を決める際に考慮すべきポイント》
- 立地の人通りの多さ
- 営業時間の長さ
- 想定される客単価や来店頻度
- スタッフの人数
上の項目をもとにシミュレーションし、現実的な数値を設定することが大切です。特に初出店の場合は理想を追い求めすぎず、「見込み」として売上目標を立てると、無理なく運営しやすいでしょう。
堅実な売上目標を立てることで、安定した店舗運営を実現できます。
新規出店の成功にはエリア別マーケティングが欠かせない
新規出店を成功させるには、地域の特性に合わせたエリアマーケティングが欠かせません。エリア特性を無視して出店した場合、次のようなリスクがあります。
- 集客が見込めず売上が伸びない
- 販促効果が薄れ、販促費用も無駄になる
- 運営コストが利益を上回り、赤字になる
例えば、車で移動することが多い地域に駐車場のない店舗を出店すると、顧客の選択肢から外れるおそれがあります。また、学生街に高価格帯の飲食店を出しても、手頃な価格を重視する学生のニーズに合わなければ、思うように集客できないでしょう。
自店舗の経営方針と地域特性の合致する出店候補地を決め、新規出店の成功率を高めるためにも、エリア別のマーケティング戦略が求められます。
新規出店におけるエリア別マーケティングに役立つ分析手法4選
新規出店時のエリア別マーケティングには、次の分析手法が役立ちます。
- 3C分析
- 4P・4C分析
- SWOT分析
- PEST分析
それぞれ、どのようなときに使える分析手法なのかを解説します。
分析手法1:3C分析
3C分析とは、同じ頭文字「C」で始まる「市場・顧客(Customer)」「競合(Competitor)」「自社(Company)」の3つの視点で市場環境を整理し、自社の強みや戦略の方向性を見極めるためのフレームワークです。
《3C分析での分析項目例》
- 市場・顧客:顧客の特性やニーズ
- 競合:競合の現状、市場シェア、評価、強み・弱み
- 自社:第三者による評価、強み・弱み
例えば高級住宅街にペット用品店を出店する場合、3C分析をおこなうことで当該エリアの特徴をつかめます。
《高級住宅街での3C分析》
- 市場・顧客:ペットにお金をかける富裕層が多い
- 競合:大手チェーンは存在するが、専門性に欠ける
- 自社:プレミアムフードや高品質ケア用品に特化している
このように、3C分析を活用することで自社の方向性が明らかになり、競合との差別化が可能かどうかを判断できます。地域特性に合ったマーケティング設計をおこなうために、3C分析を取り入れてみましょう。
分析手法2:4P・4C分析
4P・4C分析は、企業視点と顧客視点の両面から商品やサービスの提供価値を検討するマーケティング分析の手法です。
4P分析では製品(Product)、価格(Price)、流通(Place)、販促(Promotion)の4方向から分析し、企業側が提供する戦略を整理します。
《4P分析での分析項目例》
- 製品:自社製品の強み、保証、返品
- 価格:競合の価格との比較、品質に釣り合う価格設定
- 流通:販売チャネルの選択、提供方法
- 販促:販促活動、広告
一方、4C分析は顧客価値(Customer Value)、経費(Cost)、顧客利便性(Convenience)、コミュニケーション(Communication)という顧客側の視点で分析します。
《4C分析での分析項目例》
- 顧客価値:顧客が価値を感じるもの
- 経費:金額・時間・心理の面で顧客が納得できるコスト
- 顧客利便性:商品購入のしやすさ
- コミュニケーション:SNSやイベントなどの交流手段
例えば、高齢者の多い住宅街に小規模スーパーを出店する場合、4P・4C分析のフレームワークを使うと、以下のような分析をおこなえます。
《4P分析(企業視点)》
- 製品:少量品や惣菜などの高齢者向け商品を強化していることが強み
- 価格:高齢者層にとって手頃な価格帯
- 流通:高齢者が徒歩で来店できるように住宅街の中心に出店
- 販促:折り込みチラシや回覧板などのアナログ媒体を活用
《4C分析(顧客視点)》
- 顧客価値:日々の食事準備が楽になり、健康的な商品を購入できる
- 経費:低価格で生活費の節約に役立つ
- 顧客利便性:徒歩圏で買い物できる・コンパクトな店内で移動しやすい
- コミュニケーション:店員が直接接客対応をしてくれるため、安心感がある
このように両方の視点で分析することで、地域住民のニーズに寄り添った店舗づくりが可能になります。
分析手法3:SWOT分析
SWOT分析は、自社の「強み(Strengths)」「弱み(Weaknesses)」と、外部による「機会(Opportunities)」「脅威(Threats)」の4つの視点から事業環境を把握し、戦略を立てるフレームワークです。
《SWOT分析での分析項目例》
- 強み(S):自社のプラス要因、商品やサービスの強み
- 弱み(W):自社のマイナス要因、商品やサービスの弱み
- 機会(O):市場や顧客ニーズ・社会情勢・経済状況といった外部要因がもたらす商機
- 脅威(T):外部要因が自社に与えるマイナスの影響
例えば都市部にカフェを出店する場合、SWOT分析を活用することで自社の事業環境を明らかにできます。
プラス要因 | マイナス要因 | |
内部 環境 |
【強み(S)】
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【弱み(W)】
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外部 環境 |
【機会(O)】
|
【脅威(T)】
|
SWOT分析で出店エリアにおける課題と可能性の両面を可視化することにより、出店後のリスクを最小限に抑え、データに基づいたマーケティング戦略を立案できます。
分析手法4:PEST分析
PEST分析は、自社を取り巻く外部環境の特徴や変化を把握するためのフレームワークで、政治(Politics)、経済(Economy)、社会(Society)、技術(Technology)の4視点から市場を分析します。
《PEST分析での分析項目例》
- 政治(P):法改正、政治動向、公正競争
- 経済(E):為替・価格変動、GDP成長率
- 社会(S):人口動態、環境、ライフスタイル
- 技術(T):特許、商品化技術、技術革新
例えば都市部にコワーキングスペースを出店する場合、PEST分析を用いることで、市場ニーズの高まりや将来的なリスクを見極められます。
《PEST分析での分析項目例》
- 政治(P):働き方改革により、企業がサテライトオフィスやテレワークスペースを求めている
- 経済(E):フリーランスや個人事業主の増加で一定の需要はあるが、景気悪化時は契約キャンセルのリスクが懸念される
- 社会(S):働き方の多様化・副業解禁などで、柔軟な仕事空間を求める層が増えている
- 技術(T):高速Wi-Fiや防音ブース、予約アプリなど、設備面の差別化が集客力に直結する可能性がある
このような分析結果をもとに、市場の変化に柔軟に対応した戦略を立案しやすいでしょう。
まとめ:エリア別マーケティング戦略で新規出店を成功させよう!
- 新規出店のマーケティングは4ステップで進める
- 新規出店を成功させるには「エリア別マーケティング」の考え方が大切
- 新規出店では、さまざまなマーケティング分析の手法が役立つ
新規出店におけるマーケティングでは、まず店舗の経営方針やコンセプトを決めた上で、商圏分析をおこないエリア特性を理解しましょう。商圏分析の結果をもとに、出店候補地や売上目標を決め、出店計画を立てます。
また、新規出店の成功率を高めるにはエリアの特性に合わせた戦略を実施する「エリア別マーケティング」が欠かせません。今回紹介した分析のフレームワークを参考に、エリアごとに最適な戦略を立てましょう。
これから出店準備に取り掛かる方は、まず出店予定エリアの情報を集め、自社のコンセプトやターゲットと合うかを検討することから始めましょう。