デモグラフィックとは?基本の分析項目、店舗戦略への3つの活用方法

販促イベントの集客には、デモグラフィック分析が必要不可欠といわれます。
しかし、デモグラフィックとは何か、どうやって分析をすればよいのかがわからず、悩む方もいるのではないでしょうか。
本記事では、デモグラフィックについて詳しく解説します。
基本の分析項目に加え、店舗戦略への活用法も紹介するため、効果的な訴求やイベント設計をしたい方、販促企画を担当している方はぜひ参考にしてください。
目次
デモグラフィックとは?基本の分析項目・指標の使い方を解説
「デモグラフィック」とは、性別・年齢・居住地域など人口統計学的な属性の総称で、主にSTP分析でセグメンテーションをおこなう際に使う指標です。
アンケート調査や総務省統計局が整備する政府統計ポータルサイト「e-Stat」などで、デモグラフィックを取得できます。
デモグラフィックを扱うメリットは、データの変化が少ないことと、経年的な変化を予測しやすいことです。定期的にデータ収集と分析をおこない、データ値を更新するとよいでしょう。
次に、デモグラフィックの分析項目と、どのようなときに使用するかを解説します。
基本の分析項目
デモグラフィックの基本的な分析項目と、分類の例は次のとおりです。
- 年齢:10代、20代、30代…のように、世代別に分類する
- 性別:男性、女性、無回答
- 居住地:自社の商圏に応じた自治体名などで分類する
- 世帯構成:1人世帯、核家族世帯、夫婦と両親の同居世帯 など
- 学歴:高卒、専門学校卒、大卒 など
- 職業:会社員(営業/事務)、経営者(個人商店/法人) など
- 年収:500万円未満、500~1,000万円未満、1,000万円以上
ほかにも、民族や宗教などを分析項目として扱うことがあります。
デモグラフィックはSTP分析で使われる
分析によって得たデモグラフィックデータは「STP分析」で活用します。
STP分析とは、マーケティング戦略における基礎的なフレームワークで、アメリカの経済学者フィリップ・コトラーによって提唱されました。
《STP分析の流れ》
- S:Segmentation(セグメンテーション):市場の細分化
★デモグラフィックデータは、この段階で使用 - T:Targeting(ターゲティング):ターゲットの決定
- P:Positioning(ポジショニング):自社や商品・サービスの位置づけ
デモグラフィックデータによってセグメントをより細分化することで、次におこなうターゲティングやポジショニングの精度を高められます。
サイコグラフィック・ジオグラフィックとの違い
デモグラフィックのほか、セグメンテーションに使われる代表的な指標に「サイコグラフィック」「ジオグラフィック」があります。
それぞれの違いをまとめました。
項目 | 属性 | 項目例 |
デモグラフィック | 人口統計学的属性 | 性別、年齢、居住地域、職業、所得、家族構成など |
サイコグラフィック | 心理学的属性 | 価値観、ライフスタイル、趣味、購買動機など |
ジオグラフィック | 地理学的属性 | 国、地域、気候、人口密度など |
【シーン別】デモグラフィック分析の活用方法3選
ここでは、デモグラフィック分析の活用方法を、シーン別に3つ解説します。
デモグラフィック分析は「エリアマーケティング」にも活用できます。
エリアマーケティングとは「特定エリアにおけるマーケティング戦略」で、自店舗のある地域や出店予定地を分析し、その地域に合う販促・販売活動をおこなう手法です。
デモグラフィックデータの分析結果に基づいてターゲット層を明確にすることで、ニーズに合うエリアマーケティング戦略を立案・実行できます。
《デモグラフィック分析にはGISツールの活用がおすすめ》
さまざまなデータを地図上に可視化させて分析できる「GISツール」は、エリアマーケティングに役立つツールです。
デモグラフィックデータはこのGISツールと相性が良く、地理的な条件や地域ごとのトレンドなどを把握しやすいため、より効果的なエリアマーケティングを展開できます。
活用方法その1:出店戦略の立案
デモグラフィックは、エリアマーケティングで出店戦略を立案する際に有効活用できます。
地域属性に合った商品やサービスを展開できるようになるため、出店戦略を立てる際には効果的といえるでしょう。
出店候補地のデモグラフィックデータと地理情報をGISツールで可視化することにより、ターゲット層の属性を把握できます。出店候補地の地域特性とターゲットの属性がわかると、集客に適した立地の選定や具体的なコンセプトの設計といった、売上に直結する出店戦略の立案に活用できます。
活用方法その2:販促施策の立案
顧客属性に合った販促施策の立案や選定をする際にも、デモグラフィックを活用できます。
顧客の性別・年齢・職業によって、アプローチの届くメディアは異なるため、適切なセグメントをおこない、自社のターゲット層に合うプラットフォームを選びましょう。
実際の客層と想定したターゲット層が一致しない場合は、予測どおりの効果を得られないおそれがあるため、販促施策の見直しが必要です。
デモグラフィックを販促施策に活用することによる利点は、次の2つです。
- 費用対効果の高いアプローチが可能になる
- プロモーション媒体の最適化により、効果的に売上を伸ばせる
活用方法その3:競合店分析の実行
競合店舗の立地や集客力の分析にも、デモグラフィックデータを有効活用できます。
競合店の周辺住民を調査し、年齢層や収入・職業などを自店舗のターゲットと比較することで、どの程度の利益を見込めるかが予測できます。
競合との競争を避け、自社にとって有利な市場を見つけるには、デモグラフィックを活用するとよいでしょう。
デモグラフィック分析の結果を生かそう!2つの販促施策例
ここでは、デモグラフィックを活用して、年齢構成または世帯構成を加味した販促施策例をそれぞれ解説します。
STP分析の流れに沿って紹介するので、デモグラフィックを生かした販促施策を立てる際の参考にしてください。
販促施策の例1:年齢構成を加味して販促施策を立てる
1つ目は、デモグラフィックの「年齢構成」を加味した場合の販促施策例です。SNS施策の効果が地域によってばらつきがあり、平日の集客が不安定という課題を持つスイーツ専門店を紹介します。
《年齢別人口構成を把握》
都市部に店舗を構えるこの店舗では、セグメンテーションのために、GISツールで店舗周辺3km圏内の年齢別人口構成を把握することにしました。
その結果、駅前エリアには20〜30代が多く、徒歩圏外の住宅地には40〜50代とファミリー層が多いとわかりました。
店舗では、可視化したデモグラフィックデータや時間別来客数データなどから、曜日や時間帯でターゲットが明確に分かれていて、一括型のプロモーションでは非効率であると判断。
そこで、平日は20〜30代OL、週末はファミリー層(30代後半〜40代主婦と子ども)をそれぞれターゲットに設定し、若年層にはSNS、ファミリー層にはオフライン媒体でリーチしました。
《施策例》
平日の夕方から夜にかけてはSNS限定で「ご褒美スイーツ」投稿キャンペーンを実施し、オフィス街をターゲットにしたLINEクーポンを仕事終わりの17時以降に限定して配信。
週末には家族連れ向けの「親子セットメニュー」「キッズイベント」を実施し、地元ママ向けの情報誌やフリーペーパーへの広告掲載もおこないました。
このように客層に合わせた訴求をすることで、曜日による売上変動の緩和や、ブランド認知とリピート率の向上が期待できるでしょう。
販促施策の例2:世帯構成を加味して販促施策を立てる
2つ目に紹介する販促施策は、世帯構成を加味して販促施策を立てた、郊外の地域密着型スーパーマーケットチェーンの例です。このチェーンは同一市内に3店舗構えているものの、店舗間の購買傾向に差があり、一律配布のチラシが機能していないという課題がありました。
《世帯構成別人口を可視化》
まず、各店舗を中心とした1〜2km圏における、単身世帯・ファミリー世帯・シニア世帯といった世帯構成別人口をGISでマッピングし、それぞれの居住エリアを可視化しました。
可視化した世帯構成別人口をPOSデータと組み合わせ、地域特性に応じた購買傾向を分析した結果、わかったのは次のことです。
- A店(大学近く):惣菜や冷凍食品の購買率が高い
- B店(住宅街):まとめ買いや子ども用食品の売上が多い
- C店(旧市街地):健康志向、安全志向の商品売上が高い
この結果を踏まえ、A店は単身世帯、B店はファミリー世帯、C店はシニア世帯をターゲットにして、下記の販促施策を設計しました。
店舗 | 施策例 |
A店 |
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B店 |
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C店 |
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これらの戦略によって、次のことが期待できるでしょう。
- 店舗ごとの「地域と世帯構成に合ったポジショニング」の構築
- 無駄な広告コストの削減
- チラシやクーポンの反応率アップ
- 地域密着度の向上による、リピーターやロイヤルカスタマーの増加
まとめ:デモグラフィック分析でデータに基づいた販促を!
- デモグラフィックとは性別・年齢など、変化の少ない属性の総称
- デモグラフィックデータはアンケート調査や「e-Stat」などで取得できる
- 出店戦略や販促施策の立案、競合店分析の実行に活用できる
デモグラフィックの項目には年齢・性別・地域・職業などがあり、STP分析の「セグメンテーション」で使用します。デモグラフィックデータはGISツールと相性がよいため、効率的に分析できます。
デモグラフィックを活用してデータの根拠に基づいた販促をおこなうことで、売上アップにつながるでしょう。
まず、国勢調査データなどで、自店舗の商圏における人口構成を確認することから始めてみましょう。