位置情報データを分析して人流を理解しよう!取得方法や活用例を解説します

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GPSやWi-Fiなどから得られる位置情報データはビジネスのあらゆるシーンで活用されています。ビジネスにおけるさまざまなマーケティング戦略に活用できる位置情報データですが、具体的なデータの集め方や使い方、分析方法について詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。

今回は「位置情報データが何に役立つのか」「データから何がわかるのか」を解説し、具体的な取得方法や活用例を紹介します。
位置情報データをマーケティングに活用し、企業経営の安定や売上の向上につなげたい方はぜひ参考にしてください。

客層の変化に気づいたら 既存店の商圏分析に

位置情報データは、人の動きの分析に役立つ

位置情報データを用いる最大の理由は人の動きを分析するためです。消費者の行動傾向を把握すると、その特性に沿った戦略を組み立てることで効率的に売上向上を目指せます。

今後のマーケティング戦略に位置情報データを活用するために、まずは定義や活用シーンを学んでいきましょう。

位置情報とは、モバイル端末の位置を示した情報のこと

位置情報とは4つの衛星を使って取得する「モバイル端末を持つ人々の位置を示した情報」です。

この衛星は現在時刻と位置情報の信号を常時モバイル端末に送信しています。その信号によって衛星とモバイル端末の距離が測定される仕組みによって位置情報を取得します。4つのうち3つの衛星から取得した信号で受信機の位置を割り出し、4つめの衛星によって誤差を補正して特定したのがその端末の位置情報です。

位置情報データは幅広いシーンで活用できる

位置情報データは、以下のシーンで活用できます。

  • ジオマーケティング:ユーザの位置情報を活用したマーケティング
  • 災害の復旧:情報提供による救命活動など
  • 交通サービスの改善:運行本数の増減など
  • 交通整理:交通量の分析や最適な迂回路の誘導など

このように、位置情報サービスはビジネスでのマーケティング以外にも災害対策や交通状況の改善など広い分野で活用されています。
技術の発展が著しい現代においては、今後もデータ取得の精度向上が期待できます。将来的な目線で見ても位置情報データは人々の生活を助け、ビジネスの成功を支える存在となることが予想できるでしょう。

位置情報データでわかる3つのデータカテゴリ

位置情報データからわかるのは、次の3つの要素です。

  • 日時・緯度経度情報
  • 移動元・移動先の情報
  • 年代・性別

ここでは、カテゴリごとに得られる位置情報データの特徴を確認しましょう。

データの種類1:日時・緯度経度情報

位置情報データの基礎的な情報は、「ID・日時・緯度経度情報」の3つです。

  • ID:ユーザ別に割り振られたID
  • 日時:データを取得した日時
  • 緯度経度情報:ユーザの場所を示す座標

前年比や前月比などの期間を限定したデータや時間帯別のデータを比較し、時系列ごとの分析もできます。

ただしデータの取得方法によって取得範囲や精度が異なるため、目的に応じて適切な方法を選ぶことが欠かせません。

取得形式 精度
GPS 建物の密集地や室内、通信障害といった要因のほか、情報を取得するために選択したアプリの利用者数によって精度が変わる
Wi-Fi 情報の取得はWi-Fiスポットが設置されたエリアに限られる
形態基地局 地域ごとに異なる基地局の設置間隔で測位精度が変わる
BLEビーコン 範囲は10m〜100m程度。ビーコン設置があれば建物内・地下でもでも測定可能。

データの種類2:移動元・移動先の情報

位置情報データからは「ユーザがどの位置からどの位置へ移動したのか」といった移動元と移動先情報の把握も可能です。この「ある出発地点(発地=Origin)からある目的地(着地=Destination)に移動したデータ」を調査することを「OD調査」といいます。

OD調査では、「いつ移動したのか」「特定の位置にどのくらい滞在したのか」などの日時情報と組み合わせることで、人流分析における時間帯別分析もおこなえます。
OD調査のデータをもとに分析することで店舗や施設における人々の動向を把握でき、効果的なマーケティング施策が立案可能です。

データの種類3:年代・性別

位置情報データの取得時、そのデータに紐づくモバイル端末の契約者情報からユーザの年代や性別がわかります。これにより、特定のエリアにおける年代や性別ごとの行動傾向を把握し、ユーザ層に適したビジネスを展開できます。

ただし、年代や性別などの位置情報データは、大元のデータを取り扱うキャリアのデータ精度に依存する点に注意しましょう。

位置情報を取得したとしても、学生の位置情報であるとは限らない

例えば、学生がスマホを持つ際、契約者は学生自身ではなく両親のどちらかであることが多いでしょう。この場合、学生のスマホに関連付けられた年代や性別は両親のものとなります。

しかし、実際にスマホを持ち歩いているのは学生であるため、このスマホからの情報をそのまま取り込むと「40代女性が週に4回駅前のファーストフード店に来店している」「50代男性が毎日学校施設に長時間滞在している」といった本来とは異なるデータが吸い上げられてしまいます。

位置情報データを使った人流データ分析手法

位置情報データを用いて人流データ分析を行う分析手法は複数存在します。分析手法の違いは、主に何を対象として分析するかという点です。

ここでは、人流データ分析の一部である以下3つの手法について具体的な概要を解説します。

  • 来訪者(OD)分析
  • 通行量分析
  • 滞在人口分析

それぞれがマーケティング戦略に役立つ分析手法なので、ぜひ施策に取り入れてください。

来訪者(ODデータ)分析

来訪者(ODデータ)分析とはOD調査で得られるデータを用いて人流を把握する分析手法です。OD調査の内で、人流に着目した調査を「パーソントリップ調査」と呼ぶ場合もあります。

OD調査は民間企業以外に、政府自治体が実施する場合もあります。文書で公開されるので、OD分析をする際には貴重なデータとなるでしょう。

来訪者(ODデータ)分析で分かるのは、交通量の多少や人流や交通量が多い場所の特定です。分析結果を用いると、「自店舗にどんな交通機関で何歳の男性あるいは女性が来店した」といった詳細な人流データが読み取れます。

また、オンラインマーケティングの一種であるジオターゲティング広告を実施する際、来訪者(ODデータ)分析の結果をもとに配信する対象を絞り込むことも可能です。
このように、来訪者(ODデータ)分析による人流データは、オンライン施策もオフライン施策にも活用できるでしょう。

通行量分析

通行量分析とは通行量調査のデータを元にした分析手法です。通行料調査とは、特定のポイントにおいて何人の通行者が通過したかを集計したもので、年代や性別、人数なども計測します。また、車やバイクを対象にした調査もあり、これは「交通量調査」とも呼ばれています。

通行量分析を行うと、既存店の前や今後出店を計画している場所に面する通りにどの程度の人が行き来しているかを把握できます。

実際に店舗を営業する現地の詳細な人流データを取得できることが通行量分析のメリットです。通行人の属性だけでなく時間帯、曜日などに分けて細かく分析できるため、需要予測や出店戦略に活用できるでしょう。

なお、マップマーケティングのTerraMapでは、オプション機能の一つとして人流データ分析機能があります。この人流データ分析機能では、通行料分析と来訪者(ODデータ)分析が可能です。

滞在人口分析

滞在人口分析とは特定の地域に短期間滞在していた人の位置情報を用いた分析手法です。位置情報データを使用することで、どの程度の期間滞在していたかだけでなく、滞在者がどこからきたどんな人物なのかも把握できます。

滞在人口分析は滞在期間の指定によって、さまざまな業種に活用できます。
例えば、大型商業施設などでは数時間の滞在期間に絞り込むことで属性別の離脱率や、曜日や時間別の滞在率を測れるでしょう。数日の滞在を測定すれば、観光地で宿泊客の行動傾向を分析したり、どの地域からの滞在が多いかを把握してマーケティング施策に活かせます。

なお、From-to分析と呼ばれることもありますが、同じ内容を指しています。

位置情報データで使われる4つのデータ取得方法

位置情報データは、主に4つの方法で取得されます。

  • Wi-Fi
  • GPS
  • 基地局
  • BLEビーコン

データの取得方法は、サービスの提供者やツールによって異なります。位置情報を取得する方法の違いを理解した上で、自社や自店舗にとって必要なデータを取得可能なサービスやツールを選んで利用しましょう。

位置情報データの取得方法1.Wi-Fi

Wi-Fiを使った位置情報サービスでは、接続端末の識別番号とアクセスポイントの情報を合わせた統計データによる位置情報を取得可能です。
Wi-Fiを用いて位置情報データを取得するメリットは、屋内外を問わず検知できることです。施設内にWi-Fiアクセスポイントがあれば、地下やビル内などでも正確な測定が行えます。
ただし、Wi-Fiアクセスポイントの多い地域で精度の高い情報を取得できる一方で、設置場所が少ない地域の情報は精度が低く、設置されていない地域では位置情報を取得できない場合もあります。

位置情報データの取得方法2.GPS

GPSデータを使った位置情報サービスでは、人工衛星が発する電波を受信して位置情報を特定可能です。データは地図アプリなど、位置情報を取得できるアプリで取得できます。

ユーザの滞在時間、一連の動向などといった詳細なデータを取得できる反面、通信状況が悪いときやアプリの利用者が少ない場合はデータの精度が落ちるため、注意しましょう。
また、GPSは屋内やトンネル、ビルや森林が密集した場所などでは衛星からの電波を受信できず、精度が落ちるというデメリットもあります。

位置情報データの取得方法3.基地局

基地局とは携帯電話や無線通信などの電波を送受信する施設を指します。

GPSのオン・オフを問わず、携帯電話に電波がつながっていれば位置情報データを得られるため、広範囲でデータを取得可能です。ただし、基地局の設置間隔によってデータの精度が変動するため、測定地域によってはデータが粗くなる点に注意しなければなりません。

位置情報データの取得方法4.BLEビーコン

スマートフォンに搭載される「Bluetooth Low Energy」の信号を利用したビーコンからも位置情報データを取得できます。

ビーコンデバイスの設置場所であれば室内や地下でも高い精度でデータを取得可能です。ただし、信号の送信範囲が狭いため、広範囲での位置情報データ取得には適していません。

位置情報データの分析に有効な「メッシュ分析」とは?

位置情報データを分析する際は広範囲の人流分析が可能な「メッシュ分析」が有効です。

メッシュ分析の概要やメリット・デメリットを確認し、出店分析や商圏分析をおこなう際にご活用ください。

メッシュ分析は広範囲の人流を把握するのに役立つ

メッシュ分析に使われるメッシュデータとは、地域を正方形に区切り区画(メッシュ)単位ごとに整備されたデータです。

メッシュデータの活用例として、以下が挙げられます。

  • 時間帯別の位置情報データをメッシュで区分し、店舗の営業時間を決定する
  • 人々の移動に関する位置情報データをメッシュで区分し、商圏を設定する
  • 年代・性別の位置情報データをメッシュで区分し、商圏の傾向を把握する

メッシュ分析のメリット・デメリット

メッシュ分析の主なメリットは広範囲における人々の動きを把握できることです。出店にともなう商圏分析などにおいて、特定エリア全体の傾向をつかめるでしょう。

一方、分析データの中に関連性の低いデータが混ざりやすいことがデメリットです。

例えば「競合店舗前の人流を分析する」という目的でメッシュ分析をおこなう場合、入店者だけでなく単なる通行人も位置情報データに反映されます。実際の入店者数と計測データが大幅にずれる可能性があるため、POSデータや店内での計測データなどをもとに別の分析手法と合わせて活用するのがおすすめです。

まとめ:位置情報データから人流を理解し、マィングに活用しよう

  • 位置情報データを分析すると、人の動きや傾向を把握できる
  • 位置情報データから3カテゴリのデータがわかる
  • 位置情報データの分析には、メッシュ分析が有効

位置情報データから人の動きや傾向をつかむことで、ユーザの位置情報を活用した、精度の高いマーケティング施策を実行しやすくなります。

位置情報データには「日時・緯度経度情報」「移動元・移動先の情報」「年代・性別」の3カテゴリが存在するため、データの活用目的に合わせて必要なデータを取得し、効果的な出店地分析や商圏分析を実行しましょう。

客層の変化に気づいたら 既存店の商圏分析に

タグ : エリアマーケティング 位置情報 分析手法
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