小売業でデジタルマーケティングを成功させたい!OMO戦略の基本と施策例4選

「オンラインとオフラインの使い分けが、いまいちわからない」 「OMO戦略って聞いたことあるけど、具体的に何をすればいいの?」
小売業に関わる中で、このような疑問を持つ方も多いでしょう。
本記事では、小売業が抱えるデジタルマーケティングの課題と、その解決策であるOMO戦略について、施策例とともに解説します。
OMO戦略の本質とオムニチャネルとの違いを知り、施策例から成功のコツを学びたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
小売業のデジタルマーケティングとは?OMO戦略が求められる背景

「デジタルマーケティング」とは、ECサイト、モバイルアプリ、SNS、メールといったデジタルチャネルを活用し、オンラインとオフラインのデータを統合して顧客体験を最適化する取り組みです。
現代はスマートフォンの普及により、24時間どこでも情報収集や商品の購入が可能になったため、EC市場が急速に拡大しています。商品情報を口コミサイトやSNSなどのオンラインで調べ、店舗で実物を確認してECサイトで購入するといった、複数のチャネルを組み合わせた購買プロセスも一般化しつつあります。
顧客がオンラインとオフラインを自由に行き来できる現代においては、チャネルごとの対応では不十分といえるでしょう。このような環境変化に対応するため、小売業界でもDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進が急務となっています。
そこで求められるのが「OMO(Online Merges with Offline)戦略」です。
小売業のデジタルマーケティングにおけるデータ分断の2つの課題

オフライン(実店舗)とオンライン(ECサイト)のデータが分断されているときの課題には、以下の2つがあります。
- 一貫した顧客体験を提供できない
- デジタル施策の効果を測定できない
ここでは、それぞれ具体的な事例とともに、どのような不満を顧客に与えるのかを解説します。
データ分断の課題その1:一貫した顧客体験を提供できない
ECサイトと実店舗で顧客データを別々に管理すると、同一顧客の購買履歴や嗜好などの情報が共有されないため、一貫した対応ができないという課題があります。
例えば、こうした事例は多くの小売業では珍しくありません。
- ECサイトで明るい色の衣服を好んで選ぶ顧客に対し、店舗側は在庫の都合で暗い色をすすめる
- ある顧客に対し、ドラッグストアで店舗購入済みの商品について、ECサイトから「カートに商品が残っています」という購入促進メールを配信する
チャネルによる対応の変化や、通知メールのたびに同じ情報を入力するといったストレスは、顧客ロイヤルティの低下を招きます。
データ分断の課題その2:デジタル施策の効果を測定できない
実店舗とECサイトのデータが分断されることによる課題として、デジタル施策の効果を測定しにくい点も挙げられます。
それぞれのデータを共有していない場合、ECサイトの売上は把握できたとしても、SNSへの投稿やアプリ通知が顧客の来店に与える影響、決済データとチャネル別売上の相関性などは不明であるため、施策と成果を紐付けできません。
また、実店舗とECサイトが連携できていない状態は、経営面にも影響を及ぼすでしょう。効果測定が困難であればデータに基づいた意思決定ができないため、過去に成功した施策の繰り返しとなり、各チャネルへの適切な予算配分ができず、PDCAサイクルも回らないでしょう。
経営判断の質を向上させるためにも、データの統合による施策効果の可視化が重要です。
小売業のデジタルマーケティングで重要なOMO戦略とは?
オンライン・オフラインのどちらであっても、企業側には「顧客に一貫した購買体験を与えること」が求められています。そのために小売業のデジタルマーケティングで重要視されている戦略がOMOです。OMOとは、オンラインとオフラインのデータを統合し、チャネルの区別をなくした顧客体験を提供する戦略です。
OMOと類似する概念に「オムニチャネル」があります。この2つは次のように違います。
- OMO:オンラインとオフラインは統合している
- オムニチャネル:オンライン・オフライン問わず、さまざまなチャネルを活用して顧客との接点を持つことはOMOと共通するが、チャネル自体は明確に分かれている
OMO戦略をおこなうにはスマートフォンの普及と、十分に構築されたモバイルネットワークが必須です。次に、モバイル決済ユーザの増加、データを収集・デジタル化するための高品質なセンサー、自動化・AI技術の進化も不可欠であるといわれています。これらが整った現代社会において、OMO戦略は実現可能な施策となりました。
小売業のデジタルマーケティングですぐに始められるOMO施策例4選

ここでは、少ない投資で実践できるOMO施策の例を4つ取り上げます。
- SNSを活用した店舗集客
- ECサイトと店舗在庫の連動
- オンライン接客の導入
- 決済手段の多様化
それぞれの施策から、OMO施策の導入をイメージしてみましょう。
施策例1:SNSを活用した店舗集客
ある地域密着型のスーパーが、ECサイトのアクセス数が伸びているため、店舗への来客数も増やしたいと考えて、実店舗の購買データとECサイトのアクセスログを分析したところ、以下の傾向が判明しました。
- 毎朝、開店前の時間(6~8時)にECサイトの閲覧が集中している
- 限定商品や割引情報への反応が特に高い
そこで、SNSを導入しておこなったのが、次に挙げる3つの施策です。
- SNSの登録者限定で、毎朝6時に特売情報を配信する
- SNS登録者の購入時に、クーポン機能で5%割引を適用する
- SNS限定商品の案内を送付して、来店動機を創出する
このスーパーはECサイトを運営しているため、SNSの導入は考えていませんでした。しかし取り入れてみると、アカウント作成が無料で拡散力が高いなどのメリットが多く、親和性があったようです。
オフライン側の購買データと、オンラインのSNSを効果的に連動させた施策により、SNS経由で来店する新規顧客の増加が期待できるでしょう。
施策例2:ECサイトと店舗在庫の連動
とあるドラッグストアチェーンは、ECサイトでの売上は順調に伸びているものの、在庫切れによる購買機会の損失と、顧客が店舗を利用していないという2つの課題に直面していました。ECサイトで顧客を獲得しても店舗との連携がなく、チャネル全体での売上最大化ができていなかったためです。
上の課題を受け、このドラッグストアがECサイトユーザの位置情報データと来店データを分析した結果、ECサイトユーザの約40%が「近隣店舗の顧客」であることが判明しました。
分析結果をもとに、このチェーンは以下の販促施策を実行しました。
- ECサイトの商品ページに近隣3店舗の在庫状況をリアルタイム表示させる
- ECサイト購入商品の、近隣店舗での当日受け取りを可能にする
- 「店舗受け取りの場合は送料無料」とすることでオンラインと店舗の併用を促し、顧客の利便性を上げる
これらのOMO施策により、ECサイトと近隣店舗を併用している顧客が店舗受け取りサービスを利用すると、ついで買いなどによる店舗の客単価の増加も期待できるでしょう。
施策例3:オンライン接客の導入
化粧品専門店では、ECサイトのアクセスと初回購買は増えているものの、リピート率が低く、地方の顧客からの売上が期待した水準に達していないという課題を抱えていました。
来店が困難な地方在住の顧客に対し、オンラインで専門家のアドバイスを与える仕組みが整っていなかったことに原因があるようでした。
地方に在住する顧客の来店と売上の増加を目指すために、同店はECサイト利用客の属性データと購入商品を分析しました。その結果、地方在住の顧客ほど購入前の検索時間が長く、「パーソナルカラー診断サービス」のニーズが高いことが判明しました。
これを受けて同店が実行したのは、以下のオンライン接客施策です。
- チャットボットによる自動応答で、24時間いつでも商品情報を提供
- ビデオチャットを活用し、メイクアップアーティストがパーソナルカラー診断を実施
- 専門家によるオンラインアドバイスを与えると同時に関連商品を販売
- SNS・ECサイトで、新商品の発表やメイクアップ実演をライブ配信
オンライン接客を活用したOMO施策をおこなうことで、地方在住で来店の難しい顧客の購入が前年よりも増加し、接客スタッフの稼働効率化と人員コスト削減も期待できるでしょう。
施策例4:決済手段の多様化
あるコンビニエンスストアチェーンはキャッシュレス化に対応できていなかったため、決済手段による顧客行動の違いを把握できず、マーケティング施策の最適化も実現していませんでした。
同店が決済方法別のデータを分析したところ、以下の事実がわかりました。
- 現金、クレジットカード、スマートフォン決済ごとの購買パターンや購買額に大きな差がある
- 特にスマートフォンで決済する顧客は、時間帯や曜日による購買の規則性が高く、特定の年代に集中している
分析結果をもとに、次の施策をおこないました。
- 主要とされる3つのQRコード決済サービスへの対応
- 時間帯別・年代別による決済データ分析
- データに基づく商品配置の見直し
決済手段の多様化に対応することでレジにおける顧客の待ち時間が短縮されるため、顧客満足度の向上が期待できるでしょう。
まとめ:OMO施策で顧客体験を向上させ、デジタルマーケティングを成功させよう!
- 小売業の課題は、オンラインとオフラインのデータが分断されていることにより、一貫した顧客体験の提供や施策の効果測定が困難になること
- OMO戦略によるデータの一元化で、顧客満足度と経営効率の向上を同時に実現できる
- SNS活用、在庫連動、オンライン接客、決済の多様化など、段階的に導入できる施策がある
小売業が直面するデジタルマーケティングの課題の多くは、オンラインと店舗のデータ分断に起因しています。OMO戦略の実現には全社的な大規模投資が必要と思われがちですが、段階的に施策を導入しながら進めることが重要です。
まずはECサイトのアクセスデータから、実店舗がある地域のユーザの閲覧頻度や最終購入日、購買額の傾向を抽出し、そのユーザが実店舗でどのような行動をしているかを把握することから始めてみましょう。



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