出店戦略ではマーケティングの視点が欠かせない!4つの分析手法と活用例

出店戦略を立てる際はマーケティング視点で分析をおこない、得られたデータを根拠に判断することが必要です。
「出店戦略で合理的に判断するために必要なことはなんだろう」「社内の意思決定者をどう説得すべきか」と悩んでいる方もいるでしょう。
今回は、出店戦略の成功に欠かせない「マーケティングの視点」とは何かを解説し、4つの分析手法と活用例を挙げます。データに基づく出店判断を学びたい方、具体的な分析のやり方を知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
目次
出店戦略の成功にはマーケティングの視点が欠かせない
出店戦略を成功させるには「なんとなく良さそう」という直感や過去の経験に頼るのではなく、データを用いたマーケティングの視点を組み合わせることが欠かせません。
なぜなら、出店の前にターゲットとする顧客のニーズを分析し、どのエリアに・いつ・何を・どのように提供するかを戦略的に判断することが求められるためです。これにより、顧客視点での判断が可能となり、出店戦略の精度を高められます。
マーケティング視点で出店戦略を立てるメリット
マーケティング視点で出店戦略を立てることで、次のようなメリットを期待できます。
- ターゲットに合った立地を選びやすくなる
- 顧客ニーズを的確に把握できる
- 競合とポジションを差別化できる
- 効果的な販促施策を立てられる
- 経営リスクを最小化できる
マーケティング視点で戦略的な計画を立てると、曖昧な基準で判断することがなくなり、出店や出店後の店舗経営を成功させやすいでしょう。
出店戦略で役立つマーケティング分析の手法4選
ここでは、出店戦略で役立つマーケティング分析の手法を4つ解説します。
- 商圏分析
- ターゲティング・ポジショニング
- 4P・4C分析
- SWOT分析
それぞれの分析手法と活用例を紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
マーケティング分析手法1:商圏分析
「商圏分析」は、出店戦略の土台となるエリアマーケティングの基本的な分析手法です。
出店候補地一帯の市場規模、住民のライフスタイル、競合状況、地理的条件などを多角的に調査・分析することで、その地域における需要や将来性の見極めが可能です。
商圏分析では統計データや顧客情報を活用し、直感に頼らず論理的に判断できるため、出店の成功率を高めるうえで欠かせない手法といえます。
商圏分析の出店戦略への活用例
商圏分析をもとにした出店戦略の例として、ファミリー層向けベーカリーカフェの出店を想定して紹介します。
まず、出店候補地を郊外のショッピングモール近隣、商圏を徒歩15分圏内として設定し、地図上で可視化した後に人口や世帯構成を分析したところ、次のような結果を得られました。
《商圏分析の結果》
- 商圏の総人口約25,000人、世帯数は約7,000世帯、30〜40代のファミリー層が全体の40%を占める
→ターゲット層との親和性が高いエリアであると判明 - 徒歩圏内にベーカリー系の競合店舗が2件(テイクアウト中心のサービス)、カフェチェーンが1件存在する
→イートイン付きベーカリーは競合が少ないと判明 - 商圏には保育園・小学校が複数あり、午前〜午後にかけて主婦層が多く滞在している
→昼間の主婦需要を狙える立地であると判明
こうした商圏分析により、地域ニーズと自社業態の相性が良く、競争優位性も確保できるため、出店に適したエリアであると判断できます。
マーケティング分析手法2:ターゲティング・ポジショニング
ターゲティングとポジショニングは、どちらも、マーケティングで有効なフレームワーク「STP分析」の工程です。
セグメンテーション(S)で分類した市場からターゲティング(T)で狙う客層を絞り、ポジショニング(P)で競合との違いを明確にします。
出店戦略では、以下の手順でターゲティング・ポジショニングを進めます。
- 市場の顧客をセグメントに分類する
- ターゲットとするセグメントを決める(ターゲティング)
- ターゲットを明確にするために、具体的な人物像(ペルソナ)を設計する
- ターゲット・ペルソナに合った出店戦略を立てる(ポジショニング)
ターゲティング・ポジショニングの出店戦略への活用例
若年層向けのスイーツ専門店を都内の駅周辺に出店するケースについて、ターゲティング・ポジショニングの活用例をまとめました。
まず年齢・性別・ライフスタイル・価値観といった切り口で市場を細かく分類し、ターゲティングで狙うべき顧客層を明確にします。
《ターゲティングの例》
- 年齢・性別:18〜29歳の女性中心
- ライフスタイル:SNSを頻繁に利用し、流行に敏感
- 消費傾向:見た目・話題性のある商品に引かれ、写真映え重視
- 関心・価値観:手頃な価格でトレンド感があるもの・友達とシェアできることを重視
次に、ターゲットをより具体化するために、ペルソナ設計をおこないます。
《ペルソナ設計の例》
- 年齢・性別:24歳女性
- 職業:都内の広告代理店に勤務する会社員
- 行動パターン:仕事帰りや休日に友達とカフェ巡りをして、SNSに投稿する
- 消費傾向:見た目のかわいい、1,000円以内のスイーツをよく購入する
- 想定購入シーン:仕事帰りに利用する駅の近くにある店舗に立ち寄り、自分用に購入する
ターゲティングの結果と設計したペルソナを踏まえ、「立ち寄りやすさ」「話題性」「ビジュアルの強さ」をブランドの核と位置づけ、競合とは異なる魅力を発信するポジショニングを設定します。
SNS映えするカラフルな商品ラインナップと、写真を撮りたくなるようなパッケージデザインにより、流行に敏感な若年層の心をつかむ出店戦略を展開できるでしょう。
マーケティング分析手法3:4P・4C分析
「4P分析」は企業視点、「4C分析」は顧客視点で戦略を策定する分析手法です。
企業と顧客それぞれの視点から商品や価格設定、販促方法を具体化することで、より効果的な出店戦略の立案が可能になります。
4P分析では、製品(Product)、価格(Price)、流通(Place)、販促(Promotion)の4項目について、企業視点の戦略を立てます。
《4P分析》
- 製品:商品の特徴や魅力、品質、購入後のサポート内容
- 価格:競合との価格を比較、品質に見合う価格設定
- 流通:適切な販売チャネル、提供方法
- 販促:予算に応じた販促活動、広告
反対に、4C分析は顧客価値(Customer Value)、経費(Cost)、顧客利便性(Convenience)、コミュニケーション(Communication)の4つについて、顧客視点でニーズを分析します。
《4C分析》
- 顧客価値:顧客が魅力やメリットを感じるもの
- 経費:顧客が納得できるコスト(金額・時間・心理)
- 顧客利便性:購入までの流れや使いやすさ
- コミュニケーション:企業と顧客との接点、交流手段
4P・4C分析の出店戦略への活用例
ここでは、働く30〜40代の人々をメインターゲットとしたフィットネスジムを、都内のビジネス街周辺に出店する際に、4P・4C分析を活用した例を紹介します。
忙しいビジネスパーソンの生活にフィットする施設として認知を広めるために、まずは企業視点の4P分析をおこないます。
《4P分析の例》
- 製品:少人数制グループトレーニングを採用、シャワー・パウダールーム完備、アプリ連携で体調管理可
- 価格:月額9,000〜12,000円のサブスク制、初月無料キャンペーンあり
- 流通:駅徒歩3分以内・オフィス街の近くに立地、通勤帰りに立ち寄りやすい動線を意識
- 販促:SNS広告、ビジネスマン向けポータルサイト広告、近隣オフィスへのチラシ配布
続いて、顧客視点でニーズを把握するために、4C分析もおこないます。
《4C分析の例》
- 顧客価値:短時間・効率重視で成果が出る、ストレス発散にもつながる
- 経費:月1万円前後の出費であれば、医療費や体調管理への投資と捉えられる
- 顧客利便性:駅近、Web予約&アプリ決済対応、仕事後でも通いやすい営業時間
- コミュニケーション:トレーナーにチャットで相談できる、食事やトレーニングのフィードバックがもらえる、モチベーションを支援してもらえる
このような4P・4C分析の結果をもとに、ターゲットの生活動線とマッチした立地や、顧客ニーズに合う提供価値を明確にすると、効果的な出店戦略を実現しやすくなります。
マーケティング分析手法4:SWOT分析
SWOT分析は、内部要因の「S:Strength(強み)」「W:Weakness(弱み)」と、外部要因の「O:Opportunity(機会)」「T:Threat(脅威)」の視点でおこなう分析手法です。
《SWOT分析の項目》
- 強み(S):自社が市場で優位に立てる特徴や資源
(例:ブランド力、立地、商品力) - 弱み(W):自社の課題や改善が必要な部分
(例:競合と比べて不利な点、内部の問題点) - 機会(O):外部環境の変化によって得られるビジネスチャンス
(例:市場の成長やトレンド、制度の変化) - 脅威(T):自社にとってマイナスに働く外部要因
(例:大手の新規参入、物価上昇による仕入れコスト増)
SWOT分析を出店戦略に活用することで、自社の立ち位置を客観的に把握しながら、強みを最大限に生かした戦略を立てやすくなります。
SWOT分析の出店戦略への活用例
SWOT分析を使い、ファミリー層や高齢者をターゲットとしたドラッグストアの出店戦略について考えてみましょう。
郊外の住宅地や幹線道路沿いを出店候補地として、効果的なマーケティング施策を策定します。自社の現状についてSWOT分析をおこなった結果は、次のとおりです。
プラス要因 | マイナス要因 | |
内部 要因 |
【強み(S)】
|
【弱み(W)】
|
外部 要因 |
【機会(O)】
|
【脅威(T)】
|
分析結果から出店戦略を立て、自社の現状に適した施策を実行できます。
《SWOT分析の結果をもとにした施策例》
- 郊外の新興住宅地に向けて「売り場が広くまとめ買いしやすい」「子連れでも安心な駐車場を完備」といったコンセプトで利便性を打ち出す
- 認知度の低さを地域広告や折込チラシで補い、プレオープンでの特売・イベントを通じて地域への定着を促進する
まとめ:マーケティング視点で出店戦略を見直し、データに基づいて意思決定しよう
- 出店戦略の成功にはマーケティングの視点が欠かせない
- マーケティング視点で戦略を立てると、出店や店舗経営の成功可能性が高まる
- 出店戦略ではマーケティングの分析結果が役立つ
出店戦略を立てる際は、直感や経験頼みではなく、データを用いてマーケティング視点で判断することが大切です。
マーケティング視点で出店戦略を立てることで、ターゲットに合った立地を選べる、顧客ニーズを的確に把握できるなど、さまざまなメリットがあります。
これから出店戦略を立てる方は、まず自社がおこなっている戦略をマーケティング視点で見直し、商圏分析、ターゲティング・ポジショニング、4P・4C分析、SWOT分析の中から使いやすい分析手法を取り入れてみてはいかがでしょうか。