カニバリゼーションはなぜ発生する?2つの対策で共食いを防ごう!

出店戦略 , 店舗開発 , 立地分析
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「新店舗を既存店舗の近くに出店すると、既存店舖の売上が落ちないか不安」「出店エリアが重なって売上が分散している気がする」と悩んでいる方は多いでしょう。

店舗同士の商圏が重なると、利益を共食いする「カニバリゼーション」が発生する恐れがあります。

そこで今回は、カニバリゼーションの概要や起こる理由、対策をまとめました。

商圏が重なるのを避けて店舗ごとの売上を最大化したい方や、商圏を分析しながら効率よくエリア戦略を立てたい方も、ぜひ参考にしてください。

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カニバリゼーションとは、自社の店舗同士で顧客を奪い合う状態のこと

「カニバリゼーション」とは、マーケティングにおいて同一企業の商品や店舗が市場で競合し、顧客や売上を奪い合う状態を指します。語源は「共食い」を意味する英単語の「cannibalization」で、「カニバる」と略されることもあります。

例えば、美容室を展開する企業が、既存店舖の近くに価格帯やサービス内容・ターゲット層のまったく同じ新店舗をオープンした場合、顧客が分散して双方の売上が下がってしまうでしょう。

このような状態を、カニバリゼーションと呼びます。

ドミナント戦略との違い

カニバリゼーションとセットで使われることが多い言葉に「ドミナント戦略」があります。これは特定エリアに店舗を集中して出店する戦略です。

特定エリアでのシェアを拡大できる、他社の参入を防げるなどのメリットがある反面、カニバリゼーションも発生しやすいため、ドミナント戦略をおこなう際には注意が必要です。

カニバリゼーションが起きる理由は主に3つ

カニバリゼーションは、アプローチする客層や市場における自社の位置づけが定まっていないときに発生しやすい現象です。

カニバリゼーションが発生する主な理由は、以下の3つです。

  • 既存店舖の近くに新規出店した
  • 店舗同士のターゲットが重なっている
  • 商品・サービスの差別化が不十分である

既存店舗の近隣エリアへ出店する際にカニバリゼーションの発生を防ぐポイントも、あわせて解説します。

カニバリゼーションが起きる理由その1:既存店舖の近くに新規出店した

カニバリゼーションが起きる理由としてまず挙げられるのは、既存店舖の近くに新店舗を出店することです。

同じ企業の店舗が近接しているとエリア内の顧客が分散するため、売上を奪い合うことになります。自店舗同士で争う状態が続くと、他に配分すべきリソースが無駄になり、店舗経営の効率も低下する恐れがあります。

こうした事態を避けるには、出店前に商圏分析をおこない、既存店舖のターゲットエリアと重複しない立地を選ぶことが重要です。

カニバリゼーションが起きる理由その2:店舗同士のターゲットが重なっている

カニバリゼーションが起きる理由の2つ目は、店舗同士のターゲットが重なっていることです。

たとえ異なるエリアに出店しても、各店舗で年齢・性別・ライフスタイルなどが同じターゲットを想定している場合、結果的には顧客を取り合う状態になるでしょう。

特に、車移動が中心の地域では移動距離の負担が少ないため、同じ客層をターゲットにすると新店舗に流れやすくなります。

ターゲットの重複を防ぐには、出店前に商圏や他店舗を分析して地域ごとのニーズを明確にし、それぞれの立地に合ったターゲットの設定が欠かせません。

カニバリゼーションが起きる理由その3:商品・サービスの差別化が不十分である

同じ企業の店舗同士で商品やサービスを差別化できていないことも、カニバリゼーションを引き起こす理由となります。

複数の店舗で同じようなメニューや価格、サービスを展開していると、顧客に「どの店舗を選んでも変わらない」という印象を与えるためです。

その結果、新しい体験を求める顧客が既存店舗から新店舗へ流れ、顧客の奪い合いが発生します。

カニバリゼーションを防ぐためにも、新しい商品やサービスを導入する際には、既存商品との差別化ポイントを明確にして各店舗の強みを打ち出しましょう。

カニバリゼーションを避ける2つの対策

カニバリゼーションを避けるには、出店準備の段階で商圏分析やポジショニング戦略を取り入れ、ターゲットが被らないエリアを選定する必要があります。

ここでは、カニバリゼーション対策を意識した商圏分析とポジショニング戦略の取り組み方、それぞれの具体例を合わせて解説します。

カニバリゼーションの対策その1:商圏分析

「商圏分析」とは、店舗を経営できるエリア(商圏)の特性や住民の属性を調査・分析することです。商圏分析で見るべき項目を以下に挙げます。

  • 人口構成:年齢層・男女比など
  • 文化・風習
  • ライフスタイル・購買行動の傾向
  • (自社を含めた)競合となりうる店舖の数や市場への影響
  • 商圏バリア:線路や車線数の多い道路といった、顧客の来店を妨げる地理的障壁

カニバリゼーションを防ぐには、商圏分析の結果をもとにターゲットやペルソナの差別化を図る戦略が効果的です。

同一エリアに複数の店舗を展開する場合、それぞれの店舗で「年齢層」「性別」「ライフスタイル」などの軸をずらしてターゲットを設定すると、顧客の奪い合いを避けられるでしょう。

商圏分析の項目や進め方の詳細は、以下の記事にも記載しているのでご覧ください。

商圏分析を使ったカニバリゼーションの対策例

とあるカフェチェーンを経営する企業が、カニバリゼーション対策として商圏分析を活用した対策例を紹介します。

郊外に店舖を構えていたこの企業が同じ市内の駅前に新店舗を出店したところ、郊外店の売上が25%落ち込みました。

そこで、商圏分析ツールを使って来店客の導線や生活圏を調査した結果、次の情報がわかりました。

  • 同一エリアの主婦層が両店舗を使い分けている
  • 駅前店は、短時間利用や買い物ついでの利用が多い
  • 郊外店はこれといった強みがなく、コンセプトが曖昧になっている

そのためこの企業は、郊外店を「長時間滞在型の地域密着カフェ」へとリブランディングし、以下の施策を実施しました。

  • Wi-Fiや電源の整備
  • 親子向けメニューや絵本の導入
  • 地域限定スイーツの提供

こうした独自性の強化によって滞在時間とリピート率が向上し、一度落ちた売上の回復も期待できるでしょう。

カニバリゼーションの対策その2:ポジショニング戦略

カニバリゼーションを避けるもう一つの有効な方法が、ポジショニング戦略です。

ポジショニング戦略とは本来、市場において他社と差別化を図り、自社の商品やサービスを顧客の中に位置づけるための方策です。

しかし今回のテーマはカニバリゼーションであるため、競合となりうる既存店舗との違いや独自性を打ち出し、顧客にそれぞれの店舗を利用してもらう状態を作ることが求められます。

ポジショニング戦略は、「STP分析」の中でおこないます。

《STP分析の流れ》

  • セグメンテーション(Segmentation):市場をセグメントに分ける
  • ターゲティング(Targeting):細分化したセグメントからターゲットを定める
  • ポジショニング(Positioning):市場の中で自社のポジションを明確にする

まずセグメンテーションで、市場を顧客の属性などで細かく分類します。次にターゲティングをおこなって細かく分類アプローチする客層を絞り、最後にポジショニングで自社の立ち位置を明確化して、既存店舗との差別化を図ります。

STP分析の流れでポジショニング戦略に取り組むと、自社の強みや独自性が顧客に伝わりやすくなり、カニバリゼーションのリスクを下げられるでしょう。

ポジショニング戦略を使ったカニバリゼーションの対策例

カニバリゼーション対策の例として、ポジショニング戦略を導入したドラッグストアチェーンを紹介します。

このドラッグストアチェーンは、郊外のロードサイド店と駅前の小型店で同一の商品・価格を展開したために客層が重なり、売上の分散が発生していました。

そこで、郊外店と駅前店周辺の住民データを収集してセグメンテーションとターゲティングをやり直し、両店舗のポジショニングを明確化することにしました。

両店舗でセグメンテーションをおこない、ターゲティングした結果は、以下のとおりです。

《ターゲティング例》

  • 郊外のロードサイド店:車移動の多い子育て世帯、高齢者
  • 駅前の小型店:通勤で駅を利用する20〜40代の単身世帯、OL層

再選定した両店舗のターゲットに対して、このドラッグストアチェーンは次のようなポジショニング戦略を立てました。

《ポジショニング戦略の例》

  • 郊外のロードサイド店:まとめ買いに適したベビー・介護用品を強化
  • 駅前の小型店:コンビニ感覚で利用できるよう、日用品やトラベル用品に特化

この戦略によって役割が明確化され、両店舗はそれぞれ、地域の需要に適した商品を提供するようになりました。郊外店の来店頻度は回復し、駅前店は回転率が向上するといった効果を期待できるでしょう。

まとめ:既存店舖の近くに出店する際は、カニバリゼーション対策を忘れず実施しよう!

  • カニバリゼーションとは、自社の店舗同士で顧客を奪い合う状態のこと
  • カニバリゼーションが起きる理由は主に3つ
  • カニバリゼーションを避けるには、商圏分析やポジショニング戦略を活用してターゲットの重複を防ぐ必要がある

同一企業の顧客を奪い合うカニバリゼーションが発生すると、売上を最大化できず、経営状況が悪化する可能性があるため注意が必要です。

カニバリゼーションが起きる理由としては、既存店舖の近くに出店したこと、店舗同士のターゲットが重なっていること、商品・サービスの差別化が不十分であることが挙げられます。

カニバリゼーションを防ぐには、出店前に商圏分析やポジショニング戦略をおこない、出店可能性の高いエリアをリストアップすることが欠かせません。

新規出店を検討している方は、カニバリゼーションのリスクを減らせるよう、まずは売上の高い既存店舖があるエリアの郵便番号などを洗い出してみましょう。そのデータを地図上に可視化し、既存店舖の商圏や顧客属性を把握することから始めてはいかがでしょうか。

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タグ : カニバリゼーション 出店戦略 商圏 立地
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