出店戦略を立てる際は5つのフレームワークから選ぼう!活用事例も解説

「出店戦略を考えているが、思考がまとまらず方向性が明確にならない」「出店戦略に役立つ考え方があれば知りたい」と悩む方は多いのではないでしょうか。出店戦略を立てる際は、思考の枠組みとなるフレームワークを使うことで、論理的な意思決定をおこなえます。
この記事では、出店戦略に生かせる5つのフレームワークを解説します。フレームワークの活用事例や使い分け方もまとめましたので、ぜひ最後まで読んでください。
目次
出店戦略に生かせる5つのフレームワーク
出店戦略の立案にフレームワークを使用すると論理立てて考えられるため、客観的な判断やスムーズな意思決定が可能です。
今回取り上げるのは、次のフレームワークです。
- 5W1H
- 3C分析
- STP分析
- SWOT分析
- PEST分析
この5つのフレームワークを出店戦略にどう活用すべきか、それぞれ解説します。
出店戦略に生かせるフレームワークその1:5W1H
「5W1H」は物事を整理して、方向性を明確にするときに使うフレームワークで、いつ(When)、どこで(Where)、誰が(Who)、何を(What)、なぜ(Why)、どのように(How)の6項目にあてはめて考えます。
5W1Hを出店戦略の立案に使う場合、それぞれの項目は次のように置き換えられます。
- いつ出店するか(When)
- どこに出店するか(Where)
- 誰をターゲットにするか(Who)
- 何の商品・サービスを提供するか(What)
- なぜ出店するのか(Why)
- どうやって出店するか(How)
5W1Hで大枠を決め、他のフレームワークで具体的な分析をおこなって出店戦略を立てるとよいでしょう。
出店戦略に生かせるフレームワークその2:3C分析
出店戦略を立てる際には、3C分析も活用可能です。
「3C分析」は自社(Company)、顧客(Customer)、競合(Competitor)の3つの視点から現状を分析するフレームワークで、出店の可能性を次のように判断できます。
- 自社(Company):自社の強み・弱みを洗い出し、出店予定地で通用するか、リソースは足りるか、経営を継続できるかを検討する
- 顧客(Customer):出店候補地に存在する潜在顧客の年齢層や性別、ライフスタイル、購買行動などを把握する
- 競合(Competitor):出店候補地に存在する競合店の業態や価格帯、営業時間などから、自社の差別化ポイントを検討する
自社を内部環境、顧客・競合を外部環境として考えることで、マーケティング視点で出店の可能性を判断しやすいでしょう。
出店戦略に生かせるフレームワークその3:STP分析
「STP分析」はセグメンテーション(Segmentation)、ターゲティング(Targeting)、ポジショニング(Positioning)の3指標の頭文字を取ったフレームワークです。出店戦略にSTP分析を用いる場合、次の順で分析をおこないます。
- セグメンテーション:出店候補地を顧客属性やニーズごとに細分化する
- ターゲティング:細分化したセグメントから、自社の強みを生かせる顧客層を選ぶ
- ポジショニング:ターゲット層に提供する価値を明確にし、競合との差別化ポイントを打ち出す
出店戦略にSTP分析を活用することで需要のある市場や顧客を発見できるため、出店の可能性についての判断はもちろん、出店後に自社の強みを生かした施策を実行しやすくなるでしょう。
出店戦略に生かせるフレームワークその4:SWOT分析
「SWOT分析」とは、自社の内部要因となる、強み(Strength)と弱み(Weakness)、
外部要因である機会(Opportunity)と脅威(Threat)を対比させて分析する手法です。
出店戦略では、それぞれの指標を次のような考え方で活用します。
プラス要因 | マイナス要因 | |
内部 要因 |
【強み(S)】 (例)
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【弱み(W)】 (例)
|
外部 要因 |
【機会(O)】 (例)
|
【脅威(T)】 (例)
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SWOT分析で出店戦略の可能性と想定される課題を洗い出すことで、戦略的な経営判断が可能です。
出店戦略に生かせるフレームワークその5:PEST分析
「PEST分析」は政治(Politics)、経済(Economy)、社会(Society)、技術(Technology)の4つの指標によって、市場の特徴や変化を分析するフレームワークです。
出店戦略ではPEST分析を活用して、以下のように外部環境を把握できます。
- 政治(P):政府・自治体の施策や法律により、出店に有利・不利が発生する要因
(有利な例:補助金や助成金を利用できる可能性がある) - 経済(E):経済動向や地域の所得水準が出店リスクにつながる要因
(例:景気変動による消費行動の変化、地域人口の増減、コストの上昇) - 社会(S):ライフスタイルや住民の価値観が出店に影響を与える要因
(例:健康志向の上昇によるオーガニック食品のニーズ増加) - 技術(T):特許や商品化の技術、テクノロジーの進化が出店に影響を与える要因
(例:キャッシュレス決済の普及、モバイルオーダーの導入)
項目別に外部環境を捉えることで客観的な視点で市場の特徴を理解できるため、出店戦略の成功につなげられるでしょう。
出店戦略の立案にフレームワークを活用した事例2選
ここでは、出店戦略の立案にフレームワークを活用した事例を2つ取り上げます。出店戦略を立てる際の参考にしてください。
事例1:地方都市にスーパーマーケットを出店する場合
まず、スーパーマーケットを新規出店しようとする企業(A社)が、出店戦略の立案にフレームワークを活用した事例を紹介します。
A社が出店候補地として選んだ地方都市では、高齢化の進行と若年層の都市部への流出により、人口構造が大きく変化していました。そこでA社は、この地域のインフラとなるスーパーマーケットの展開を目指し、5W1Hのフレームワークを活用した出店戦略を立案することにしました。
- いつ出店するか(When)
→競合が撤退したタイミング - どこに出店するか(Where)
→公共交通機関や公共施設が生活動線上にある空き物件か空き地を活用 - 誰をターゲットにして出店するか(Who)
→単身の高齢者や車のない子育て世帯など、買い物に不便を感じている地域住民 - 何の商品・サービスを提供するか(What)
→生鮮食品・日用品・惣菜・介護関連商品など - なぜ出店するのか(Why)
→競合が撤退すると生活必需品の流通が減り、住民の生活水準が低くなるため - どうやって出店するか(How)
→厳選した生活必需品を網羅する小規模店舗。高齢者向けの宅配や移動販売も検討
5W1Hのフレームワークで物事を整理すると、どの客層にどうアプローチすべきかがわかるため、
A社の場合は、高齢者層や子育て世帯をメインターゲットとした「地域インフラとしての機能を持つ店舗」を目指した出店戦略を立てられました。
この地域で「近くて便利、必要なものがそろう」「困ったときに頼れる店」というポジションを確立することで、出店後の売上も安定しやすいでしょう。
事例2:郊外のショッピングモールにパン屋を出店する場合
次は、移動販売によって一部の客層に支持されている企業(B社)が、出店戦略の立案にフレームワークを活用した事例です。
地域情報を収集・分析したB社は、ファミリー層や高齢者層を中心とした利用者が増えている、郊外のショッピングモールを発見しました。特に、週末の朝から昼にかけての時間帯に人通りが多く、朝食や軽食を提供する店舗のニーズが高まっているようです。
このショッピングモールにパン屋を出店したいと考えたB社が、周辺環境や自社のリソースを整理してSWOT分析をおこなったところ、以下の結果となりました。
プラス要因 | マイナス要因 | |
内部 要因 |
【強み(S)】
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【弱み(W)】
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外部 要因 |
【機会(O)】
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【脅威(T)】
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健康志向の高いファミリー層をターゲットに選び、「安く食べられるパン屋」ではなく「素材にこだわることで安心して食べられる」という、競合との差別化を明確に打ち出した出店戦略を立てることで、B社の新規出店が成功する可能性は高まるでしょう。
出店戦略では目的や段階に応じてフレームワークを使い分けよう
出店戦略を立てる際は、目的や戦略策定の段階に応じてフレームワークを使い分けることが重要です。
今回取り上げたフレームワークについて、使う目的とタイミングを下の表にまとめました。
フレームワーク | 目的 | タイミング |
5W1H |
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3C分析 |
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STP分析 |
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SWOT分析 | 店舗運営に影響を与える内外の要因を整理する |
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PEST分析 |
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適切なフレームワークを活用し、効果的な出店戦略につながる分析結果を得られるようにしましょう。
まとめ:出店戦略の目的・段階に合わせてフレームワークを使い分けよう
- 出店戦略でフレームワークを使うと、論理的な意思決定が可能となる
- 出店戦略に役立つフレームワークは主に5つ
- フレームワークは出店戦略の目的・段階ごとに使い分けることがポイント
出店戦略を立てる際は、思考を整理するためのフレームワークを使うのがおすすめです。
フレームワークには5W1H、3C分析、STP分析、SWOT分析、PEST分析の5つがあり、得られる分析結果はそれぞれ異なるため、出店戦略の目的や段階によって適切な手法を活用しましょう。
これから出店戦略に取り組む方は、フレームワークを実際に使って分析することから始めてみてはいかがでしょうか。