商圏の特性を生かすマーケティング戦略を立てるには?4ステップで解説

店舗の売上が思うように伸びず、改善策に悩んでいませんか。
エリアの特徴を生かしたプロモーションが必要だと感じても、商圏分析の始め方がわからない方も多いのではないでしょうか。
実践的な手順を押さえると、地域の顧客ニーズを的確に捉えたマーケティング戦略が可能になります。
この記事では、商圏分析の基本やデータ活用、具体的な戦略の立て方をわかりやすく解説します。商圏分析をマーケティングに生かしたい方は、最後まで読んでください。
目次
地域に最適化したマーケティング戦略には「商圏分析」が欠かせない
実店舗の集客力を高め、売上を増やすには「どこで・誰に・何を届けるか」という視点が欠かせません。その出発点が「商圏」の把握です。
「商圏」とは、顧客が店舗に来店する可能性のある地理的な範囲を指します。一般的には、店舗を中心とした一定の距離や所要時間で設定します。
この商圏に「どのような人が、どれくらいいて、どう動いているのか」を明らかにするのが「商圏分析」です。
- 人口構成や世帯年収
- 競合店舗の分布
- 来店者の居住地
こういったデータを組み合わせて分析することで、商圏の実態を客観的に把握できます。
似た用語に「エリアマーケティング」がありますが、これは商圏分析を含む、より広い概念です。エリアマーケティングは、特定エリアにおける商品展開や販促といった戦略の全体を指し、商圏分析は戦略に必要な基礎データを収集・分析するステップといえます。
商圏分析でわかること
商圏分析をおこなうと、下記の情報から商圏の住民性やエリアの特徴がわかります。
- 人口の構成:総人口、年齢・性別ごとの人口 など
- 住民の属性:職業や年収 など
- 競合店舖の状況:店舖数、規模、立地 など
- 地域特性:文化や地理的特性 など
適切な商圏分析によって「どのような顧客に」「どのタイミングで」「どうアプローチをしたらよいか」がわかり、客観的な根拠にもとづいたマーケティング戦略を立てられます。
商圏分析に必要なデータの種類
商圏分析をおこなうには、地域の情報を集計したデータが必要です。多様な種類のデータから、主に次の4つを活用します。
- 統計データ
- 推計データ
- 自店舗の保有データ
- 競合データ
それぞれの概要を下表にまとめました。
種類 | 概要・データの収集方法 |
統計データ |
国や自治体・民間企業が収集・公開しているデータ 《調査名》
《データの取得方法》公式サイトなどでダウンロードまたは閲覧
|
推計データ |
複数の統計をもとに政府や民間企業が加工・推計したデータ 《データ名》
(データの取得方法は統計データと同じ) |
自店舗の保有データ |
自社で収集した、店舗ごとの実績や顧客に関するデータ 《データ名》
《データの取得方法》
|
競合データ |
競合店舗の立地や業態、販売方法などに関する情報 《データ名》
《データの取得方法》 競合企業の公式サイトや調査会社の公開データ、実地調査などで取得可能 |
商圏分析の目的によって、必要なデータは異なります。マーケティング戦略に役立つデータを選ぶために、各データの概要を把握しましょう。
マップマーケティングでは、商圏分析に生かせるさまざまな統計/推計データを提供しています。詳しくはこちらのページをご覧ください。
商圏特性を生かすマーケティング戦略の立て方4ステップ
ここでは、商圏の特性を生かしたマーケティング戦略の立て方を、4ステップで解説します。
- 商圏を設定する
- 商圏分析に必要なデータを集める
- 商圏分析を実行する
- 分析結果をもとに戦略を立案する
商圏分析の手順をつかみ、地域に根差したマーケティング戦略を立てる際に取り入れてみてください。
ステップ1:商圏を設定する
地域特性に合ったマーケティング戦略を立てるには、商圏を明確に設定する必要があります。商圏が曖昧なままでは、販促や出店戦略の精度が下がるためです。
商圏は、下記のポイントを押さえて設定することが重要です。
- 顧客の来店頻度
- 徒歩や車、電車などの交通アクセスと所要時間
- 周辺の競合店舗との位置関係
- エリアを出入りする人の流れ(人流データ) など
まず、店舗からの距離や移動時間で、目安となる範囲(想定商圏)を決めます。
想定商圏は一般的に、次のような段階に分かれます。
《商圏を移動時間で区切る場合》
- 足元商圏:徒歩5分程度で移動できる範囲
- 1次商圏:徒歩で10~15分の範囲
- 2次商圏:自転車で10~15分の範囲
- 3次商圏:車や電車で30~40分以上の範囲
想定商圏を決めたら、顧客データや位置情報・地理データなどを加味して、来店が見込まれる商圏(実勢商圏)を設定します。「実際にどのエリアから顧客が来るか」を分析することで、より現実に近い商圏を設定できます。
商圏ごとの詳細は、こちらの記事で解説しています。
ステップ2:商圏分析に必要なデータを集める
適切な商圏分析をおこなうには「なぜ分析するのか」「何を明らかにしたいのか」を明確にしたうえで、目的に合ったデータを収集することが重要です。
目的とは無関係なデータを数多く収集しても、分析の精度は上がりません。目的に合ったデータを収集すると、実践的で価値の高い分析結果を得られるでしょう。
ここで、商圏分析の目的ごとに必要なデータの例と、収集方法を簡単に紹介します。データ収集時の参考にしてください。
商圏分析の目的1:出店候補地の選定
出店候補地を選ぶ際は、「そのエリアに出店価値があるのか」を判断するためのデータが必要です。
多角的な視点から検討することで出店リスクを抑え、成功の確率を高められます。エリアの出店価値を判断するには、以下のようなデータが役立つでしょう。
《必要なデータ例》
- 周辺地域の人口・世帯数など
- 駅から店舗までの距離、商圏を狭める原因となる地理的特徴
- 主要道路の交通量や人流データ
- 競合店舖の位置や業態 など
周辺地域の統計情報は国勢調査の他、自治体の人口統計データでも取得可能です。エリアマーケティングGISを用いることで、周辺の地理的特徴がわかり、交通量や人流のデータなども集められるでしょう。
マップマーケティングでは、エリアマーケティングGISのTerraMapシリーズを提供しています。商圏分析の精度を高めたい方は、導入を検討してはいかがでしょうか。
また、競合店舖の情報は現地調査やWeb検索などで収集できますが、ロケスマデータ、スーパーマーケットデータなどを活用すれば効率が高まります。
商圏分析の目的2:販促戦略を店舗ごとに最適化したい
複数の店舗を展開している場合、立地ごとに顧客層や購買行動が異なるため、それぞれのエリアに最適化した施策を打つことで、より高い販促効果が期待できます。
店舗ごとの商圏特性に合わせて販促戦略を再設計するには、以下のようなデータを分析に用いましょう。
《必要なデータ例》
- 住所・年齢・性別・世帯年収などの顧客情報
- 顧客の購買履歴や利用履歴
- 競合他社のプロモーション状況 など
顧客情報は、会員登録やポイントカード作成時のデータから収集できます。ID-POSシステムを導入していれば、顧客の利用時間帯や購入商品などの詳細データを収集可能です。
競合のプロモーション状況は、チラシのポスティングやSNSなどの告知情報、実地調査で把握しましょう。
《必要なデータ例》
- 顧客の来店頻度や移動距離
- エリア別の交通手段
- 競合店舗の商圏データ
- 近隣地域の人口増減傾向 など
顧客の来店頻度は会員情報と購入回数データ、移動距離や交通手段は位置情報データなどを活用することで分析可能です。
競合店舖の商圏はエリアマーケティングGISツール、近隣エリアの人口動向は自治体発表の統計データで取得できます。将来人口推計データも併せて活用すると、将来的な視点での商圏分析もできるでしょう。
ステップ3:商圏分析を実行する
商圏を設定したら、集めたデータをもとに商圏分析を実行します。地理データ(GIS)・顧客データ・統計データなどを組み合わせることで、商圏の特徴をより立体的に把握できます。
商圏分析の基本的な流れは、次のとおりです。
- 設定した商圏を地図上に可視化する
- 商圏にどのような人がどれくらいいるのか把握する
- ターゲット設定やマーケティング施策と特性が合っているか分析する
こうした分析により、販促エリアの絞り込みや商品開発のヒントを得ることができます。
より詳しい商圏分析の方法は、こちらの記事で解説しています。
ステップ4:分析結果をもとに戦略を立案する
商圏分析の結果が出たら、地域特性に応じて自店舗の強みを生かせるマーケティング戦略を立てます。分析結果を読み解くことで、狙うべきターゲット層や販促を集中させるエリア、打ち出すサービスの方向性などが明確になります。
施策を実施した後は、必ず効果の検証をしましょう。来客数の変化や売上、顧客属性の変化などを分析することで、次におこなう施策の精度を上げられます。
最後に、商圏の特性に応じた戦略の例を2つ紹介します。
分析結果にもとづく戦略1:スーパーマーケットの場合
スーパーマーケットが商圏分析をおこなった結果、次のことが判明しました。
- 商圏には住宅地が多く、住民はファミリー層が中心である
- 自店舗の強みは子育て世代に優しいサービスと、安心感のある店舗づくりである
商圏分析の結果を踏まえて、このスーパーマーケットでは下記のマーケティング戦略を展開しました。
- 顧客の来店頻度や移動距離
- エリア別の交通手段
- 競合店舗の商圏データ
- 近隣地域の人口増減傾向 など
このように、商圏の特性に即した施策をおこない、ターゲットであるファミリー層のニーズに応えることで、日常的に選ばれる店舗として成功できるでしょう。
分析結果にもとづく戦略2:クリーニング店の場合
あるクリーニング店が商圏分析をおこなった結果、2つのことが明らかになりました。
- この商圏には、オフィス街に勤める住民が多い
- 自店舗の強みは、スピーディーかつ便利なサービスを提供すること
分析結果をもとにこのクリーニング店が展開したのは、以下のマーケティング戦略です。
- 朝に預かった衣類を夕方に仕上げて顧客に引き渡す「即日仕上げサービス」の提供によって、忙しいビジネスパーソンのニーズに応える
- 自宅やオフィスへの集配サービスを展開し、持ち込みの手間を省き、利便性を高める
商圏の実態を踏まえたサービス展開により、忙しいビジネスパーソンの利便性が高まるため、継続的な利用を促せるでしょう。
まとめ:適切な商圏分析をして、地域特性を生かしたマーケティング戦略を立てよう
- 商圏分析は、商圏の特性を生かすマーケティング戦略の基盤となる
- 複数のデータを組み合わせることで精度の高い分析が可能
- 施策後は効果検証をおこない、施策の改善につなげることが重要
商圏の特性に合ったマーケティング戦略を立てるには、データを集めるだけでなく、分析結果をどう生かすかが重要です。
地域の人口構成や生活スタイル、競合店舗の状況を具体的に把握して、自店舗の強みを最大限に生かせる戦略を組み立てましょう。
施策実行後は顧客の反応や売上に与えた効果を検証して、戦略のブラッシュアップを継続的におこなうことが必要です。
これにより、地域ニーズに寄り添った店舗運営が実現し、長期的な顧客満足と売上アップにつながります。
商圏の特性を生かしたマーケティング戦略を立てるためにも、まずは自店舖の1次商圏に居住する人々の年齢層や世帯構成を、地域統計でチェックすることから始めてみましょう。