国勢調査データ×GISで商圏分析を効率化!データ取得から活用まで4ステップ

店舗経営に関わる方の中には「出店候補地の人口構成を客観的なデータで比較したい」「既存店舗の商圏特性を正確に把握したい」と悩んでいる方もいるでしょう。
商圏分析を効果的におこなうには、国勢調査データの活用やGISによる可視化が欠かせません。
今回は、国勢調査データとGISを組み合わせた商圏分析の基本や、データ取得から実務活用までの具体的な手順について解説します。地図上でエリア特性を効率的に分析する手法を知りたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
国勢調査データとGISはどう活用する?商圏分析で「できること」を理解しよう

商圏分析において、国勢調査データとGISは強力なツールです。両者を組み合わせることで、単なるデータでは見えにくかった地域特性を、地図上で直感的に把握できるようになります。
まずは基本的な概念と活用イメージを理解しましょう。
国勢調査データとGISの基本
国勢調査データは、5年ごとに実施される日本の基幹統計調査です。
市区町村を細分化した町丁・字単位や500m・1kmメッシュで人口・世帯情報が 取得でき、性別、年齢、世帯構成、就業状態など商圏分析に必要な項目が網羅されています。無料で利用できる公的データという点も大きな魅力です。
また、GIS(地理情報システム)は、地図上にさまざまなデータを重ね合わせ、視覚的に分析するシステムです。統計値の羅列だけでは把握しにくい地域の傾向を、色分けやグラフで直感的に理解できるようになります。
この2つを組み合わせることで、「どこにどれだけの人がいるか」「どのエリアにターゲット層が集中しているか」が地図上で一目で分かるようになり、直感的な意思決定が可能になります。
商圏分析での活用イメージ
国勢調査データとGISの組み合わせは、実務で以下のように活用できます。
《例1:出店候補地の人口密度を地図で比較》
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A地点とB地点のどちらが人口密度が高いか、地図上で色分けして比較できます。半径2km圏内など同じ条件で評価することで、客観的な出店判断が可能となります。
《例2:ターゲット層が多いエリアを特定》
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「30-40代」「ファミリー層」などターゲット層が多いエリアを色分けで視覚的に特定できます。
美容院なら女性客が多いエリア、学習塾なら子育て世帯が多いエリアなど、ターゲット層が多く滞在するエリアを効率的に見つけられます。
《例3:既存店舗の商圏内の世帯特性を把握》
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店舗周辺にどのような属性の人が住んでいるかを分析し、販促施策や商品構成の見直しに活用できます。
国勢調査データをGISで活用する方法を4ステップで解説

国勢調査データとGISを活用した商圏分析は、以下の4ステップで進めます。
- 必要なデータを特定する
- データを入手する
- GISツールで地図上に表示する
- 分析結果をもとに戦略を立てる
1つずつ解説します。
ステップ1:必要なデータを特定する
闇雲にデータを集めるのではなく、まず「何を知りたいか」を明確にすることが重要です。
出店戦略を検討する場合は「年齢別人口」「世帯数」、販促戦略を立案する場合は「居住期間」「就業状態」など、目的に応じて必要なデータは異なります。国勢調査で取得できる主な項目は、人口総数、年齢別人口、世帯数、世帯構成、就業状態、住居の種類などです。
目的を先に決めた上で、データを収集するという順序を意識し、分析目的に合った項目を選定しましょう。無駄なデータ収集を避けることで、効率的な分析が実現します。
ステップ2:データを入手する
国勢調査のデータベースは、政府が運営する統計ポータルサイトe-Stat(政府統計の総合窓口)から無料で入手できます。会員登録なしでもダウンロードが可能です。
商圏分析をおこなう際は、以下2種類のデータが必要です。
- 境界データ:地図の形状を示すデータで、町丁目やメッシュの地理的範囲を定義する
- 小地域データ:人口や世帯数などの統計数値データで、各エリアの属性情報を含む
この2つを組み合わせることで、地図上に統計情報を表示できます。e-Statで「境界データ」「小地域データ」と検索し、必要な年度・エリアのデータをダウンロードしましょう。詳しい操作手順はe-Statの公式ガイドを参照してください。
ステップ3:GISツールで地図上に表示する
GISツールには無料版と有料版があります。
無料で使えるツールには、e-Stat内のjSTAT MAP(政府提供の統計地図作成ツール)があります。初めて試すには最適ですが、本格的な商圏分析には機能が限られる場合があります。
また、有料の商圏分析専用ツールは、業務効率化や高度な分析に対応しています。国勢調査データが最初から搭載されているため、データ取得の手間が省け、レポート作成の自動化も可能です。
集めたデータは、次の3ステップで地図上に表示しましょう。
- ダウンロードしたデータをツールに読み込む
- 境界データと統計データを紐づける
- 人口密度などを色分けして地図に表示
本格的な商圏分析なら専用ツールの使用がおすすめ
本格的に商圏分析をおこなうなら、商圏分析専用のGISツールが効率的です。
当社が提供する「TerraMapシリーズ」なら、以下の機能で分析業務を効率化できます。
- 最新の国勢調査データを標準搭載
- ワンクリックで商圏レポートを自動作成
- 初心者でも使いやすい直感的な操作画面
データ取得から分析、レポート作成までを一元化でき、出店戦略や販促施策の精度向上に貢献します。TerraMapシリーズの詳細は、こちらをご覧ください。
ステップ4:分析結果をもとに戦略を立てる
地図データから得られた情報を、実際の戦略に生かしましょう。
地図上にデータを可視化することで、出店候補地の人口ボリュームや密度、ターゲット層が集中しているエリア、競合店舗との位置関係などを把握できます。これをもとに、出店可否の客観的な判断やチラシ配布エリアの最適化、商圏特性に合わせた品ぞろえ・価格帯の調整が可能です。
重要なのは、「データを見て終わり」にしないことです。施策を実行したら必ず効果を検証し、PDCAサイクルを回すことで継続的な精度向上が実現します。
国勢調査データとGISの活用例2選

ここでは、国勢調査データとGISの活用例を2つ紹介します。
ケース1:新規出店エリアの選定
とあるスーパーマーケットチェーンが、新規出店をA市とB市のどちらにするか検討しています。ターゲットである30〜40代のファミリー層が、どちらに多く居住しているかを客観的に判断したい状況です。
同社は、GISを使って以下の分析をおこないました。
- 両候補地を中心に「半径2km圏内」という同条件で商圏を設定し、国勢調査データから年齢別人口と世帯構成を取得
- GIS上で色分け表示することで、ターゲット層の分布密度を視覚的に比較
- 世帯年収や持ち家率などの追加データを参照し、購買力も推定
これにより、経験や勘に頼らず、データに基づいた客観的な出店判断が可能になります。また、数字の裏付けがあることで社内での意思決定もスムーズになるでしょう。
ケース2:既存店舗の商圏分析
郊外にある家電量販店では、例年と比較して売上が伸び悩んでいるため、商圏内の人口構成や変化を把握し、販売戦略を見直したいと考えています。
これについて商圏分析をおこなう上で、店舗を中心に半径3km圏内の人口構成を国勢調査データから抽出しました。高齢化率、単身世帯比率、住居形態などを地図上で可視化し、さらに前回調査の結果をふまえて人口動態の変化も把握します。これにより、商圏内の顧客層の実態が明確になります。
分析結果から、例えば高齢単身世帯の増加が確認された場合、以下のような施策を展開できるでしょう。
- 小型家電や使いやすさを重視した商品の品ぞろえ強化
- 高齢者向けの配送・設置サービスの充実
- シニア層が多いエリアへの折込チラシの集中投下
これらの施策により、商圏特性に合致した店舗運営が実現し、顧客満足度の向上と売上回復が期待できます。特に、品ぞろえを最適化することで、既存顧客のニーズにより深く応えることができ、リピート率向上につながるでしょう。
まとめ:国勢調査データとGISで、データに基づく商圏分析を実現しよう
- 国勢調査データとGISを組み合わせて、地域の人口特性を地図上で直感的に把握できる
- e-Statから無料でデータを入手し、4ステップで商圏分析をおこなえる
- 出店判断や既存店改善など、実務での活用シーンは多岐にわたる
国勢調査データとGISの活用により、客観的な商圏分析が可能になります。具体的なステップとして、まず必要なデータを特定した上で入手し、GISツールで地図上に表示して具体的な戦略を立てます。
データに基づいた戦略立案は、出店の成功確率を高めるだけでなく、既存店舗の改善にも有効です。
まずは、政府統計の総合窓口(e-Stat)にアクセスし、「境界データ」と「小地域(メッシュ)データ」を実際に検索してみましょう。本格的な分析業務には、TerraMapシリーズのような専用ツールの導入も検討してみるのがおすすめです。




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