顧客のセグメント化はフレームワークの使用が有効!4つの分類軸も解説

一口に「顧客」といっても、その特徴はさまざまです。しかし、顧客グループごとに効果的なアプローチをおこなうにも、顧客をどう分ければよいのか悩む方は多いでしょう。
ビジネスを成功に導くには、顧客を正しくセグメント化(細分化)し、グループごとのニーズや行動パターンを正確に把握することが重要です。
今回は、顧客セグメントの考え方の基本となる4つの分類軸や、実務で活用できる代表的なフレームワークを解説します。
セグメント化の考え方やフレームワークの具体的な活用例を知り、顧客へのアプローチに役立てたい方は、ぜひ最後まで読んでください。
目次
顧客セグメントとは?基本となる4つの考え方を理解しよう
「顧客セグメント」とは、顧客を共通する特性でグループ分けする手法です。同じ特性で分類することによって個々のニーズに合う施策の実行が可能になり、LTV(顧客生涯価値)の向上にもつながります。
顧客セグメントの分類軸は、主に以下の4つです。
- デモグラフィック(社会経済的属性):年齢、性別、職業など
- サイコグラフィック(心理的属性):価値観、ライフスタイル、興味・関心
- ジオグラフィック(地理的属性):人口密度、気候、地形など
- ビヘイビアル(行動的属性):行動経路、購入履歴、サイト閲覧など
これらの軸で顧客を深く理解することで、自社に最適なマーケティング施策を打ち出しやすくなります。それぞれの分類について、次の見出し以降で解説します。
デモグラフィック(社会経済的属性)による分類
「デモグラフィック」による分類は顧客のセグメント化において広く普及している方法で、顧客を以下の人口統計学的な属性でグループ分けします。
- 年齢
- 性別
- 職業
- 年収
- 家族構成(未婚/既婚、子どもの有無など)
デモグラフィックによって分類することで、「顧客の半数を占める30~50代の働く女性をターゲットにした高級化粧品をプロモーションする」といった、効果的なマーケティング戦略を立案できます。
デモグラフィックデータは、国勢調査などの公的統計や企業独自のアンケート、GISツールなどを用いて比較的容易に収集可能です。
サイコグラフィック(心理的属性)による分類
「サイコグラフィック」は、価値観やライフスタイル、思考パターンといった心理的属性です。この属性によって分類することで、顧客が特定の商品・サービスを選ぶ心理や動機を深く捉えられます。
例えば、顧客を価値観でグループ分けして、エコ志向の強い客層に環境に配慮した製品をアピールするなど、顧客ごとにパーソナライズされた、深く響くメッセージの発信が可能です。
以下の手段によってサイコグラフィックデータの収集ができます。
- 顧客へのアンケート、インタビュー
- グループインタビュー
- SNS投稿の発言分析
サイコグラフィックデータを活用することで、具体的なプロモーションなどが可能になるでしょう。
ジオグラフィック(地理的属性)による分類
「ジオグラフィック」とは、顧客の居住地や地域ごとの気候、文化、経済状況といった地理的属性です。
ジオグラフィックによる分類は、地域ごとに異なる購買行動や嗜好を把握し、それぞれに適したマーケティング戦略を立案するときに役立ちます。リアル店舗を展開するビジネスや地域ごとに需要が異なる商品・サービスを提供する際に活用できます。
例えば、寒冷地では暖房機器、暑い地方では冷房機器の需要が高まるように、特定の地域に特化した製品やサービスを展開することで、顧客への訴求力を高められるでしょう。
ジオグラフィックデータの収集は、以下のような手法でおこないます。
- e-Statなどの公的統計情報
- エリアマーケティングツール
- データプラットフォーム
ジオグラフィックデータを活用することは、エリアマーケティングの成功につながります。
ビヘイビアル(行動的属性)による分類
「ビヘイビアル」は購入履歴やウェブサイトの閲覧回数、商品の利用状況などの属性です。実際の行動データに基づいてグループ分けすることは、顧客の好みやニーズを推定するときに役立ちます。
例えば、「アイスクリームのページを頻繁に閲覧するので、この顧客はソフトクリームも好きだろう」などのように、顧客の嗜好を推測できます。
ビヘイビアルによる分類は、パーソナライズされたマーケティング戦略の実行を可能にし、顧客満足度やLTVの向上に直結します。
ビヘイビアルデータは、CRMシステムやWeb解析ツールなどから収集可能です。
顧客のセグメント化に役立つ代表的なフレームワーク4選
顧客のセグメント化を効果的におこなうには、論理的かつ体系的な分析が不可欠です。複数のフレームワークを理解して活用することで、顧客の特性や行動を多角的に把握できるため、マーケティング施策に直結させやすくなります。
ここでは、顧客セグメンテーションに役立つ、代表的なフレームワークを4つ解説します。
- RFM分析
- STP分析
- 行動トレンド分析
- CTB分析
- デシル分析
それぞれの特徴を理解し、自社のビジネスに最適なセグメント分けを実践しましょう。
フレームワークその1:RFM分析
顧客セグメンテーションに不可欠なフレームワークの一つに、RFM分析があります。これは、顧客の購買行動を3つの指標をもとに分類する手法です。
- 最終購入日(Recency):購入日が最近であるほど高スコア
- 購入頻度(Frequency):購入頻度が多いほど高スコア
- 購入金額(Monetary):購入累計額が高いほど高スコア
上の指標によって優良顧客や新規顧客、休眠顧客などと分類することで、それぞれの客層に合わせた施策を展開できます。
例えば「購入頻度と金額は高いが、最近の購入がない顧客」を特定し、離反防止のキャンペーンを実施するなど、効率的かつ効果の高いアプローチが可能になります。
フレームワークその2:STP分析
STP分析も、顧客のセグメント化に役立つフレームワークです。STP分析では、以下の3ステップによって顧客を深く理解します。
- セグメンテーション(Segmentation):共通する属性で顧客をグルーピング(セグメント化)する
- ターゲティング(Targeting):セグメント化した中から、自社が最も注力すべきターゲットを選定する
- ポジショニング(Positioning):ターゲットに対し、自社商品・サービスの独自性とポジションをはっきりとさせ、競合との違いを打ち出す
この分析により、顧客のニーズや行動を正確に捉えた、効果的なアプローチが可能になります。ターゲットに合わせたメッセージを届けることで、顧客との良好な関係性を構築できるでしょう。
フレームワークその3:行動トレンド分析
行動トレンド分析は、顧客が「いつ・何を・どのように」購入しているのか、購買履歴や行動データから行動傾向を把握するフレームワークです。
過去のデータを時系列で分析することで、顧客の行動パターンや市場全体のトレンドを特定します。
この分析は、顧客のセグメント化において、デモグラフィックのような静的データだけでは見えない「実際の行動」に基づいた顧客理解を可能にします。
フレームワークその4:CTB分析
CTB分析は、カテゴリ(Category)、テイスト(Taste)、ブランド(Brand)の3つで分類するフレームワークで、商品の特性に着目して顧客の嗜好を深く理解できるのが特徴です。
例えば「Aブランド(B)のシンプルなデザイン(T)のバッグ(C)を好む客層」のように、より具体的なセグメントに分類できます。
CTB分析によって、顧客に響く商品の予測や新商品の開発、ターゲットに合わせたマーケティング戦略の立案が容易になります。顧客一人ひとりの嗜好に寄り添った商品提案をおこなうことで、顧客満足度の向上にもつながるでしょう。
フレームワークその5:デシル分析
デシル分析は、顧客を購入金額で10段階に分類し、各層の売上への貢献状況を明確にする分析手法です。
具体的には、次の手順で実施します。
- 顧客データを購入額の降順に並べ、10グループに分割する
- 各グループの売上比率を計算し、貢献度を評価する
売上を支えている顧客層を特定でき、「貢献度が高い顧客に集中的にアプローチする」といった戦略的なマーケティング活動が可能になります。
ただし、一度だけ高額商品を購入した顧客も上位グループに入ってしまう点に注意しなければなりません。金額のみでは継続的な優良顧客かどうか見極めにくいため、購入回数や直近購入時期も含めて判断できるRFM分析と組み合わせて使うとよいでしょう。
顧客のセグメント化におけるフレームワーク活用の事例2選
この章では、これまで解説したフレームワークを使って顧客のセグメント化をおこなった例を2つ紹介します。それぞれの例から、フレームワークの活用イメージをつかみましょう。
事例1:スーパーマーケットにおけるRFM分析の活用例
まず、プロモーションを打つべきターゲットが定まらず、効果的な販促ができずに売上が伸び悩んでいた、郊外の食品スーパーの例です。
このスーパーは感覚的な販促から脱却し、蓄積された顧客データをもとにしたアプローチをおこなうためにRFM分析を実施し、以下の3つに客層をセグメント化しました。
《顧客セグメントの例》
- 優良顧客:購入の頻度と金額のどちらも高い顧客
- 高単価顧客:購入は少ないが単価が高い顧客
- 休眠顧客:最近購入していない顧客
この分類をもとに、優良顧客と休眠顧客に向けて立案したのが以下の施策です。
《施策例》
- 優良顧客:ロイヤルティの強化を目的とした限定セールやポイント優遇
- 休眠顧客:再来店を促すためにクーポンや新商品情報をメールで配信
これらの施策を実行することで、以下の効果が期待できるでしょう。
- 優良顧客のLTV向上
- 休眠顧客の再来店を促進
- 販促費用が最適化されることによる、売上増加とコスト削減
事例2:カフェチェーンにおける行動トレンド分析の活用例
次は、曜日や時間帯などで変動する顧客の来店傾向や購買傾向を把握できず、リピート施策の曖昧なカフェチェーンの例です。
このチェーンは、時間帯・曜日・季節別の顧客分析をおこなっていなかったため、
「いつ・誰に・どのメニューを提案すればよいか」が不明確で、リピート率の向上に効果的な施策を打てないことが課題でした。
そこでこのチェーンの店長は過去の購買データを使い、最近知った「行動トレンド分析」を実施し、顧客を以下のセグメントに分類しました。
《顧客セグメントの例》
- 平日午前の常連ビジネスマン
- 客層:週3回以上の頻度で来店するビジネスマン
- 時期・時間帯:平日7:00~10:00
- 人気メニュー:単品コーヒーや軽食セット
- 週末のファミリー客
- 客層:子連れの家族
- 時期・時間帯:土日10:00~15:00
- 人気メニュー:キッズメニューやスイーツ
- 夜間の単発利用客
- 客層:一度だけの来店履歴がある顧客
- 時期・時間帯:平日18:00~21:00
- 人気メニュー:軽食やスイーツ
この分析結果から、各セグメントに合わせた施策を考えました。
《施策例》
- ビジネスマン向け:コーヒー回数券の販売、モーニングセット割引
- ファミリー客向け:家族向けキャンペーン(2杯目のドリンクを半額にするなど)
- 夜間の単発利用客向け:セットメニューの提案、ドリンク割引
これらの施策により、客単価増加やリピート率の向上が期待できます。
まとめ:顧客のセグメント化にはフレームワークを活用しよう!
- 顧客セグメントは、一人ひとりのニーズに合わせた施策の実行に欠かせない
- 顧客セグメントの分類軸は主に4つ
- 顧客セグメントの際には、フレームワークを使うのがおすすめ
顧客セグメントとは顧客を共通する特性で分類する手法です。セグメントごとにパーソナライズされた施策を実行することで、LTVの向上につながります。
顧客セグメントは、デモグラフィック、サイコグラフィック、ジオグラフィックビヘイビアルの4軸で分類できます。セグメント化する際は、フレームワークを活用することで、根拠に基づく客観的な経営判断が可能です。
顧客ごとに有効なフォローをしたい方は、この記事で紹介したフレームワークを1つ選び、自店舗の顧客をセグメントに分けることから始めましょう。