住所クレンジングとは?重要性やメリット、マーケティングへの活用例を解説

顧客管理システムなどを活用した顧客データの一元管理は、どの企業でも取り入れているでしょう。しかし、データは常に更新しているでしょうか。特に、住所データの正確さと表記の統一性は、ダイレクトメール戦略などの精度や効果に大きな影響を及ぼします。
この記事では、住所クレンジングの概要と重要性、メリットを解説します。マーケティングへの活用例も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
住所クレンジングとは、最新の住所に変換すること
「住所クレンジング」とは、下に挙げる3つの方法によって、住所データを最新状態にすることです。
- 表記揺れの統一:住所表記を一定のルールに従って統一すること
- 省略されている都道府県名などの追記
- 最新データへの更新:市町村合併にともなう旧住所の変更
複数の人が入力した住所データや数店舗のデータを統合した場合、表記揺れが起きやすくなります。表記揺れとは、次のような状態を指します。
- 町名・街区符号・番地の不統一(漢数字・算用数字の混在など)
【例】〇町一丁目3番5号/〇町1-3-5 - 「ケ/ヶ/が」の混在
【例】霞ヶ関/霞ケ関/霞が関 - 「株式会社」と「(株)」の混在
- 全角ハイフン(-)、半角ハイフン(-)、カタカナ長音(ー)の混在
- 不要なスペースの挿入
このような表記揺れや都道府県名などの省略、古い住所データは、デジタルデータとして扱う際に問題が生じる原因となるため、定期的な正規化が肝要です。
次に、住所クレンジングの重要性と手順を説明します。
住所クレンジングの重要性
住所クレンジングは無駄なコストやクレームの発生を防ぎ、効果的な販売戦略を立案し、業務を効率化するために重要です。住所表記を統一することでデータ管理が容易になり、正確な顧客分布の把握につながるためです。
顧客管理システムや営業支援ツールなどのデジタルツールで住所データを活用するには、住所クレンジングによって住所を統一し、最新情報に更新する必要があります。
住所クレンジングの流れ
住所クレンジングは以下の流れでおこないます。
- 現状把握:住所データの総量、形式(フォーマット)の違い、問題点などの洗い出し
- ルール決め:表記揺れの統一基準などを定める
- 実行:決めたルールに従って作業をおこなう
- 結果の確認:完了後に目視でチェックし、誤りがあれば訂正する
なお、今回の説明は専用ツールの利用を前提としています。
住所クレンジングをおこなうメリット
住所クレンジングをおこなうメリットは、次の2つです。
- 精度の高い顧客データを収集できる
- マーケティング効果を最大化できる
精度の高い顧客データとは、一定ルールのもとに表記を統一した、重複のない最新状態のデータです。精度の高い顧客データを収集することで、顧客対応や拠点間の意思疎通がスムーズになり、郵便物などの誤発送・返送も減るでしょう。
住所クレンジングには、マーケティング効果を最大化できるメリットもあります。顧客の居住地情報を正確に把握することで、ターゲティングの精度が向上するためです。その結果、各エリアにおける購買傾向の綿密な分析が可能となり、各店舗のキャンペーンやセールスプロモーションの最適化につながります。
住所クレンジングの代表的な手法を紹介
ここでは、住所クレンジングの手法として「辞書照合」「郵便番号マッチ」の2つと、住所データに関連する「ジオコーディング」「逆ジオコーディング」を簡単に紹介します。
辞書照合は、自社の住所データを信頼できる住所辞書と照合し、正しい住所に変換・補正する手法です。
郵便番号マッチは、住所データと郵便番号データを照合して、修正・補完する手法です。日本郵便株式会社の公式サイトにある、郵便番号検索などを活用するとよいでしょう。
ジオコーディングとは、住所・地名といった「地図情報」を、緯度と経度で表す「座標情報」に変換することです。逆ジオコーディングは反対に、座標情報を住所などの地図情報に変換します。
住所クレンジングのマーケティングへの活用例2選
最後に、住所クレンジングをマーケティングに活用した事例を2つ紹介します。2つとも登録データが多く、住所クレンジング専用ツールを利用した事例です。
その1:DM施策の精度向上
DM施策を展開していた東京都内のB美容室には、
「DMの誤配・返送数の多さ・反応率の低さ」という3つの課題がありました。
現状を把握するために2,500件の顧客リストを洗い出したところ、顧客が手書きした情報を登録していたことによる、住所表記の不統一が判明したそうです。
そこでB美容室は以下の目的を設定し、統一ルールを定め、専用ツールによる住所クレンジングを実施し、表記揺れや重複・記載漏れを修正しました。
《住所クレンジングの目的》
- 宛先の記載ミスや発送ロスの防止
- 地域ごとのターゲティング最適化
- 効果測定しやすいデータ構造の構築
B美容室はDM施策の精度を上げるために、住所クレンジングで整備した顧客データベースの分類(セグメント)をおこない、ターゲット層を再設定しました。
住所クレンジングの結果、約6%あったDMの誤配が2%に削減し、ターゲット層に合うDMの送付により、顧客のリピート率が大幅に向上したとのことです。
その2:エリアごとの売上・客単価を明確化
関西地方に店舗を展開する中堅スーパーマーケットA社は、顧客の住所データに表記揺れや欠損があり、正確な集計ができないという課題を抱えていました。
そこでA社は次の導入目的を設定して、ツールによる住所クレンジングを実施しました。
《住所クレンジングの目的》
- 住所の正規化により、市区町村や郵便番号単位で一貫した分析軸を確保する
- POSデータと掛け合わせて、エリア別の売上と客単価を集計可能にする
具体的な処理内容は以下のとおりです。
- 表記揺れや町名・街区符号・番地の統一
- 郵便番号の付与によるエリア区分の明確化
- クレンジング済みの住所データとPOSデータの統合 など
A社はまず、処理したデータをもとに「府県別の売上構成比」「市区町村別の客単価分布」のレポートを作成し、可視化しました。
次に、LTVが高く、重点的にアプローチすべき地域を明確にし、一方で客単価とリピートの低いエリアを抽出し、適切なフォロー施策を選定しました。
クレンジングしたデータを活用することで、地域ごとの消費傾向や利用頻度が可視化されます。エリアの特性に合わせて戦略的な経営判断を下せるようになり、地域別のマーケティング精度も向上するでしょう。
まとめ:住所クレンジングでマーケティングの精度を高めよう
- 住所クレンジングとは、住所データを統一し、最新状態に更新すること
- 業務効率を上げ、効果的な戦略を立てるには住所クレンジングが重要
- 顧客データの精度が上がり、マーケティング効果を最大化できるのがメリット
現状を把握し、表記揺れなどの統一ルールを定めてから住所クレンジングの作業に入ります。完了後には目視でのチェックを忘れずにおこない、誤りがあれば訂正しましょう。
住所クレンジングには、住所辞書と照合する「辞書照合」と、郵便番号と照合してデータの修正や補完をおこなう「郵便番号マッチ」の手法があります。
手はじめに、自社の顧客住所データを100件程度ピックアップして、表記揺れの例を目視確認してみてはいかがでしょうか。